2026年05月31日

東急ハンズと季節の記憶

渋谷がどれだけ変わっても現在位置確認のためのランドマークだった東急ハンズがなくなってしまうというニュースに「ああ」とため息が出る。1990年代半ば、僕は何かといえば東急ハンズに通っていた。大学を卒業してテレビ番組やミュージックビデオを作る映像制作会社に就職した僕の仕事場は渋谷のNHKのすぐそばにあって、撮影で必要なもの、紙でも文具でも、布でも木材でもプラスティックでもとりあえず東急ハンズへ出かけて調達した。何の用事がなくてもホワイトボードに「山田→ハンズ」と書いて出かけて、そのまま斜向かいにあったタワーレコード渋谷(今はサイゼリヤがある)に寄り道したりHMVでレコードを買ったり、昼食を食べてまたハンズに戻ったり、と渋谷の谷を登り降りしたものだ。

何かを作るために最初に出かける場所、それが夜寝る以外一日のほぼすべてを渋谷で過ごしていた96〜99年の自分にとっての東急ハンズだった。仕事をやめたり、ミュージシャンになったり、生活の拠点が変わったり、ホームセンターとかIKEAとかニトリとかいろんなものができて、だんだん東急ハンズに出かけることが少なくなった。

思い立ってこないだの土曜日、東急ハンズへ行ってみた。いつ以来か思い出せない。10年は経ってないと思うがここ数年では多分初めてだと思う。1つの階層が螺旋状にA・B・Cとわかれる独特のスキップフロア構造、昔はもっとピカピカでキラキラしていた気がするけれど、ちゃんと経年していて蛍光灯のあかりのなかで時代遅れになった印象も受けた。レジスタッフの皆さんはみんな英語がしゃべれるみたいだ。とにかくインバウンドのお客さんが多くて、商品ラインナップも各フロアにお土産用に喜ばれそうなものが多かった。週末のハンズは四半世紀前と同じように混雑していた。

僕は色鉛筆を一本だけ買うために長い長いお会計の列に並んで、賑やかなフロアを眺める。この場所がなくなってまた新しい何かが塗り替えて街を変えていくのだ。季節の記憶もどんどん薄れていくのだろうか。何かに描きとめておけたなら。

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Posted by monolog at 23:24│Comments(1)
この記事へのコメント
恐らく
殆どの方の記憶に
柔らかく優しく残る癒し。

渋谷、東京の主だった都心は外国になってしまうのか
と思う場面が。
廻り廻って日本文化に着地してくれると信じています。
Posted by ✐全ての人の記憶に残る at 2026年06月07日 10:37