2025年01月31日

春の予感

公園を散歩しててキラキラ輝く水面を眺めていたら頭の中に「予感」が流れてきた。きっとこれは“春の予感”なのだろうなと思ったのでスマホのカメラで撮って歌詞を重ねてリリックビデオを作りました。この曲はたしか、2011年の震災のあと最初に書いた曲でした。もう季節は二月、また新しい春が来るね。

リリースから10数年経つ歌にも言葉を添わせたり風景と合わせたりするとまた違った肌触りで聞こえてくるような気がして面白いです。何よりこの歌はずっと定期的に歌い続けてきて、全然古くなる気配がないのです。初めて聴く人もいるかもしれません。初めて聴くような気持ちで再生してみてください。




予感/山田稔明
山田稔明:vocal, guitar, bass, chorus
吉野友加(tico moon):harp, chorus
itoken:drums, toy piano
上野洋:flute
安宅浩司:clarinet  

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2024年08月31日

LIFE IS COMIN' BACK

1994年、大学3年の8月。ミニコミ誌を作ってた友だちが声をかけてくれてディスクレビューを書くために2週間ほど早くアドバンス・カセットを手に入れたから、ダラダラした二十歳の夏休みのBGMはこればっかりだった。どんな文章を書いたのか、ほんとにそのミニコミ誌が出たのかも覚えてないけど、そのカセットはずっとそばにある。

そしてあれから30年後の未来の2024年8月31日。小沢健二『LIFE』発売から30年の日本武道館公演を観にいった。残念ながら交通機関の断絶のせいで来場を諦めた人もいただろう。なんとドラマティックな台風の日々だったことか。台風をくぐり抜けて辿り着いた人たちの熱気。とにかく舞台が壮観、僕の目の前は服部隆之さんが指揮する21人編成のオーケストラだった。

丁寧に正調で歌われる「天使たちのシーン」の神々しさ。3時間のライブのなかで一番グッときたのが「ラブリー」だったのは自分でも意外、録音に使われたのと同じMartin D-18Eという電気化された生ギターで爪弾かれたイントロが本当にレコードそのままの音だった。

僕がメインで弾いてるギターMartin F-55には、その「ラブリー」で使用されたMartin D-18Eと同じDeArmond社のピックアップが装備されている。どちらのギターも当時人気のなかった、時代の徒花のようなモデルで短期間しか製造されなくて、僕のMartin F-55は世界に665本、Martin D-18Eにいたっては302本しかないらしい。

3時間のライブは素晴らしい時間だった。ステージ上のヒックスヴィルの御三方の姿を感慨深く眺める。友達にもたくさん会えた。声をかけてくれた人にも感謝。30年の時間を想った至福の夜でした。

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2024年07月10日

Glen Phillips 来日公演を観た

ずいぶん時間が経ってしまったけれど、Toad The Wet Sprocketのボーカリスト Glen Phillipsの来日公演に行ったことをブログに書いてなかった。前回8年前の来日のとき僕はどの公演も都合がつかなかったから10年ぶり(そのときも松山まで観にいった)のグレン。ぎゅうぎゅうの下北沢ラカーニャで聴く彼の歌とギターはやっぱり絶品だった。バンドの曲もソロの曲も新旧織り交ぜて、ちゃんと聴きたい歌も聴けたし、カバーで歌われたセサミストリート関連のカバーも心温まるものでした(グレンの歌う「Rainbow Connection」もいい)。

終演後、サインの列に並び挨拶するとグレンは昔CDを渡したGOMES THE HITMANのことも僕のことも憶えていてくれて嬉しかった。中学生のときから聴いてるバンドだけど、グレンは18歳でデビューしているから僕と3つしか歳が離れていない。結局鎌倉には観にいけず残念だったけれど、名古屋のライブで僕がプレゼントしたGTHのTシャツを着て演奏してくれたそうで、そういうちょっとしたことで心が元気になったりする。ありがとうございました。

いつかToad The Wet Sprocketを生で観たい。

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2024年03月10日

スライダーズを福岡で観た

頑張ってチケットを取って、エアチケットと宿を押さえて遠くまでライブを観にいくのを自分でやってみると、普段遠くからライブを観にきてくれる皆さんの苦労と楽しみを追体験することになる。みんなワクワクするんだろうな。僕もワクワクしたからね。昨年に続いてストリート・スライダーズを福岡まで観にいった。なんで福岡かというと、同級生たちとガヤガヤしたいからだ。小中と同じ学校で高校生でバンドを組んだ仲間4人。前回のキャナルシティ劇場はチケット争奪戦が厳しく、僕とやっちゃん二人だけ行くことができたんだけど、今回福岡サンパレスはキャパが倍くらいになったからみっちゃんもてっちんも一緒に行けることになった。

僕が東京で取ったチケット2枚は3階のあんまり良くない席だった。やっちゃんが福岡で取った2枚の席がもっと良いならいいねと話していたところ、ある意味奇跡のようなことが起こって、3階席の12列目と13列目、前後に4人が固まって観ることになった。偶然にもほどがある。もうそれだけで楽しい。

スライダーズはやっぱりこの日も最高だった。聴きたい歌のいくつかが聴けて、僕らが期待したあの1曲はまた聴けなかった。重たいブルーズはよりヘヴィに。ロックンロールはギター2本でザクザクバリバリと唸りをあげた。ハリーも蘭丸もえらく機嫌がよかったな。こんなにしゃべるところを僕は観たことなかった(といっても一言二言だけど)。終わって居酒屋でスライダーズの話と昔話。めちゃくちゃ忙しいタイミングにぶち込んだ弾丸旅行で、翌日のお昼にはもう東京にいたんだけど、それでもやっぱり行ってよかった。音楽は裏切らない。

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2024年03月07日

6年ぶりのWILCO

ウィルコ、久しぶりの来日公演が素晴らしかった。このバンドを好きでよかったなあといつも思う。もう何度目だろうか、2010年に最初に観て、2013年は2公演追いかけて2016年にはジェフと息子スペンサーが組んだTWEEDYのライブをリキッドルームで観て、最後は2018年のフジロックだったけれど、今回のステージが一番よかった。ウィルコはとても懐の深いバンド。革新的であり保守的でもあり、硬いし柔らかい。そしてとても優しくてあたたかい。ああ、やっぱり全公演行きたかったなあ、ってなる(あきらめ悪く大阪行きの乗換検索して無理か、、ってなってるところ、今)。

オープニングアクトの女性2人組FINOMがすごくよくて(スペンサーのドラムも素晴らしく)帰りにアナログ盤を買った。羽田のZEPPに初めて行ったけれど良い会場だった。車で行ったけど吉祥寺からなら空港行きのリムジンバスで行くとすごく楽チンかもしれないな。たくさんの刺激をもらった夜でした。

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2023年09月01日

1ヶ月半ぶりの「水曜日のインスタライブ」でした

7月以来しばらく遠ざかっていましたが「スーパーブルームーン」に託けて久しぶりに「水曜日のインスタライブ」配信しました。全歌詞集制覇企画からちょっと外れて月を愛でながら「blue moon skyline」を歌いました。『memori』から「悲しみのかけら」はワンマン後で少しハスキーな声だったかもしれませんが期間限定ボイスですね。9月になるので「harvest moon」を歌いたくなって演奏、全3曲のインスタライブ、アーカイブを公開しましたのでぜひご覧ください。次回で『memori』完走/完奏です。

コロナ禍中の2021年1月から続けている企画、最後までやり遂げたいと思っています。

  
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2023年05月03日

追憶の one day

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ストリート・スライダーズの22年ぶりの再集結、デビュー40周年記念の日本武道館公演の日がついにやってきた。全然チケットが取れなくて、急遽開放されたステージ裏側の注釈付きチケットをなんとか入手。しかし友人から2階正面の席が回ってくる幸運(チケットが手に入らなかったラウンドテーブル北川くんに譲った)。スライダーズのライブを観るのは実に35年ぶりくらいだろうか。福岡で観たのが最後のはず。ハリーと蘭丸のJOY-POPSを観たのが2018年(このときのブログはすごくたくさん読まれてて今でもたまに引用ツイートされる)、変わらぬ4人のスライダーズを観るまでに実に5年もかかった。

中学生の僕らはみんなスライダーズにハマっていた。ある世代にとって通過儀礼だったと思う。サリンジャーとか太宰治みたいな。高校になってバンドを始めるときにコピーしたのはもちろんスライダーズ、TAB譜を見て一生懸命練習したから今でもだいたい弾ける。16歳の山田稔明が最初に組んだバンドの名前は、彼らの曲から取って「EMPTY HEART」にした。ストーンズもディランもレゲエも全部スライダーズ経由で勉強したから、僕にとってのロックの学校でもあった。

4人のシンプルなステージ、1曲目が「チャンドラー」なのは意外だったけどハリーの歌が力強くて安心して嬉しくなって、そこから90分あっという間の時間だった。「one day」という大好きな曲が始まったとき、“今”が“いつ”なのか一瞬わからなくなる感覚があって、とても美しい2本のギターの重なりにしびれた。高校生の僕が一生懸命コピーしたギターがその通りに鳴っていた。MCはメンバー紹介だけ。聴きたかった曲が2つ聴けなかったから、またスライダーズのライブが観たい。まだ足りない。

会場を埋め尽くした(文字通り360度2階のてっぺんまで全部)観衆の姿とか表情とかを見てるだけでこの日がどんなに特別なのかがわかった。終演後には高校時代に組んだその最初のバンドのドラマー赤司くんに偶然にも遭遇。ミュージシャン仲間もみんな興奮冷めやらず、みんなティーンエージャーみたいだった。帰り道の途中でこの日発表された秋のツアーのチケット抽選に申し込む。35年前に巻き戻ったみたいな気分。

これで終わりじゃなくて、新しい始まりなのが嬉しい。

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2023年03月30日

ジャクソン・ブラウン、ロードアウトそしてステイ

今年に入ってたくさん楽しみな来日公演が続いて、個人的にはその締めくくり、ジャクソン・ブラウンを渋谷へ観にいった。言うまでもなくシンガーソングライターの最高峰、僕は2015年3月(そのときのブログ)、2017年10月(そのとき)に続いて3度目。すべてこのBunkamuraオーチャードホールで観てきたけれど、今回はチケットを取るのが遅くて(正直言うと行くかどうするか迷ってた)今までで一番遠い3階から見下ろす席だった。だけどやっぱり、ライブが始まってしまうともうすべての瞬間が芳醇で素晴らしい音楽で満たされた至福の3時間だった。

毎度名物の客席からの怒号のようなリクエストが今回は控えめだった気がしたのはコロナ禍以降のせいか。思わぬレアな曲もいくつか聴けたけれど、しっかりジャクソンが考えたセットリストで歌が聴けたのもよかった。2月にキーボード奏者のジェフ・ヤング、3月にデヴィッド・リンドレーと音楽を共に作ってきた盟友の旅立ちが続いたので追悼ムードも色濃かった。「Call It A Loan」は意外ににも唯一のジャクソンとリンドレーの共作曲だそうで、とても丁寧にギターのフレーズが演奏されたことが印象的だった。ジャクソンは今74歳、眉毛もひげも白髪になったけれど、すらりとした容姿と声は力強い。なんの不満もないコンサートだった。

本編最後は「孤独なランナー」で締めくくられたのだけれど、これは僕が初めて出会ったジャクソンの曲。アンコールでピアノにピンスポットライトが当たって始まったのが「The Load-Out」。これをずっと生で聴きたかったのだ。3度目のライブにして初めて体感することができて涙が溢れてきてびっくりした。ライブを見て泣くのはいつ以来だろう。そしてレコード通りに「Stay」が始まった。この繋がりが聴きたかったの、ずっと。最近買ったオペラグラスは明るくはっきり見えてとても良い。覗き込んだグラスのなかのジャクソン。これまでで一番悪い席だったけど、胸に迫るこれまでで一番素晴らしいコンサートでした。

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追記:ジャクソン・ブラウンがロックの殿堂入りしたときに彼を讃えるスピーチをしたのはブルース・スプリングスティーン。そのブルースの全アルバムをレビューする音楽メディアサイトTURNの素晴らしい企画に参加して寄稿しました。こちらもぜひお読みください。

疾走する男の気骨たる記録ブルース・スプリングスティーンアルバム・ディスク・ガイド
  
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2023年03月26日

花散らしの雨の夜、ハリー・スタイルズ

去年からずっと楽しみにしていたハリー・スタイルズのコンサートが終わった。控えめに言っても最高な時間と空間、有明アリーナという会場も良いサイズでとてもよかった。エンターテイメントの具合と音楽性の素晴らしさのバランスが絶妙。僕は昨年のコーチェラのステージと最新作『HARRY'S HOUSE』で魅了されたファン歴1年の新参者なんだけど(前作もデビュー作もすごく良くて大好きになった)、ONE DIRECTION時代の楽曲で熱狂的ハイライトを迎える会場を埋め尽くしたファンの熱量を見て感動した。みんなずっとハリーを応援してきたんだな。

推しも尊いけれどファンも尊い。コロナ禍以降で一番のライブ体験でした。

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2023年02月23日

むぎ(猫) とは何者でどこから来てどこへ向かうのか

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2月22日の猫の日、僕のラジオでおなじみ子どもDJ凪くんと一緒にむぎ(猫) ちゃんのライブを観にいった。むぎちゃんとは先週のちよだ猫まつり以来やりとりをしていろいろ聞いていたので、ライブの内容をだいたい知っていたつもりだったけどデビュー作『天国かもしれない』を全部、曲順通りに丁寧に “まくら”付きで演奏するのはとても新鮮で面白かった。フジロックで初めて観たときからずっと僕はむぎのファンなのだなあと改めて実感。

僕の横で目をキラキラさせながらステージを見つめる凪は時折興奮してわなわなしたり僕をバシバシ叩いたりして、子どもみたいで(まあ子どもなんだけど)とても可愛い。「友達は食べちゃダメ」が始まると相棒のモルモットのぬいぐるみモルくんをカバンから取り出して一緒に楽しんでいました。終演後、むぎちゃんに書いた手紙をもじもじしながら渡す凪。むぎちゃんも凪に優しかった。

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仲間、友だち、そして推しの新作っていつもとても楽しみ。むぎ(猫) のニューアルバム『SONG OF LIFE』の発売が猫の日に晴れて情報解禁となった。珍しく英語のタイトルがついているけれど、本人曰く「英語でしか言えなかった」とのこと。詳しくは今週末のPRIMECATS RADIOにゲストで登場してお話してくれます。ぜひお聴きください。  
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2023年02月22日

Phoebe Fever

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フィービー・ブリッジャーズ2度目の来日公演にしてワールドツアー最終公演を観た。先週のPAVEMENTに続き至福のライブ体験だけれど、思い返せば2020年のはじめ、フィービーはTHE NATIONALのオープニングアクトとしての来日が決まっていて、同じタイミングでBright Eyesの来日も決まっていたのが全部コロナでキャンセルになったことを忘れない。来日ラッシュは嬉しい悲鳴。レッド・ホット・チリ・ペッパーズもWET LEGも行きたかったな。

とにかく、フィービーである。2019年春の初来日は小さなハコでアコースティック編成でのライブだったから、今回2ndアルバムのリリースとコロナ禍以降のメディアでの活躍、そしてワールドツアーと全部がつながって、自信と貫禄を付帯して乗りに乗っている感じで、緩急つけた歌も力強いし、客席へ飛び込んでいくパフォーマンスも板について4年前から何倍もスケールアップした印象。こんなライブ観せられたらみんなフィービーに夢中だ。

映像も素晴らしく、約90分のライブだったが不満のひとつもない。次はボーイジニアスで来日してくれるかな。

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2023年02月16日

青春リマインダー

1994年に初めて観て、2010年の再結成来日公演以来13年ぶりに堪能したPAVEMENT。スティーブ・マルクマスのバンドやソロでの公演は何度か観ていたけれどやっぱりあのPAVEMENTを観られるなんて奇跡みたいだ。チケット取ったの去年の初夏じゃなかったかな、どんだけ楽しみにしてたかっていう話。まず1日目。控えめに言って最高だった。ささくれてるのにまろやか、耳が心地良いライブでした。もうただただ楽しい夜だった。

2日目。そう、PAVEMENTなんて観られるだけ観たいわけで、2日あるなら2日行くのさ。初日もフレッシュでよかったけど2日目はもっと良かった。セットリストも全然違うし、30余年のバンドのキャリアは1日じゃ足りないのは当然である。昨日はただただ楽しくて今日は圧倒的。むせかえるような青春をリマインドする2日間でした。Lo-fiと呼ばれていた音楽が30年経って燻製みたいになって、熟練とか貫禄とは無縁に無邪気に鳴らされて感動する。

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2022年09月25日

「ニャンとなるSONG」のこと

猫町フェス2022の東京でのステージで演奏した「ニャンとなるSONG」がとても好評で、「歌詞が読みたい」「どこかで聴けるところがないか」と少なくないメッセージやリクエストがあってとても嬉しいです。「ニャンとなるSONG」は今年の2月に書いた歌です。コロナ禍のため開催スケジュールが変更になり「ちよだ猫まつり」に出演できなくなった僕は代替案としてちよだニャンとなる会が手掛けた保護猫カフェで無観客ライブをしてそれを配信する、というのをやったのですが、そのときにスタッフの皆さんへのサプライズとして新曲を書き下ろして、それがこの歌だったのです。一日かけて突貫工事したデモ音源もちよだニャンとなる会にプレゼントして、それは神保町にある「オープンシェルター by ちよだニャンとなる会」(9月に名称が変更になりました)でBGMとして流れたりしています。このシェルターには町田尚子さんの大きな絵が飾られていて、無観客ライブはその大きな絵の前で歌いました。2月当時というのは町田さんが愛猫白木さんを亡くしたタイミングだったので、町田さんと白木さんへのメッセージも包括した歌になっていますし、何より僕自身が猫と暮らす日々のなかで出会いと別れを経験しているので、嬉しいことも悲しいことも全部詰め込んだ優しい歌にしたいなと思って書きました。興味のある方はぜひオープンシェルター by ちよだニャンとなる会へ足をお運びください。

猫町フェスで演奏する曲目を考えていたときに、この歌をみんなで演奏することほど相応しいことはないなと思いました。キーを元の歌から全音上げにして(僕より高いところを歌えるむぎちゃんがいたから歌ってもらおうと思いました)、ギターのアルペジオイントロからみおさんのバイオリンが導いてイトケンズがリズムイン、僕もむぎちゃんもイノトモちゃんもみんな口を大きく開けて歌い、かっこいいギターソロを近藤さんが弾いて、お客さんが泣いたり笑ったりしている。2月にはなんとなく「つながるころがる」という仮タイトルで呼んでいたこの歌が、猫町フェスバンドで演奏したら「ニャンとなるSONG」というちょっと間抜けなとぼけた可愛いタイトルに確定、完成した!と思いました。遠くない将来にみんなで録音したいですね。以下に歌詞を掲載します。初めてこの曲を歌ったちよだニャンとなるカフェ(現在のオープンシェルター by ちよだニャンとなる会)で行ったライブは今でもYoutubeでご覧いただけますのでぜひお楽しみください。




ニャンとなるSONG

君と初めて 出会った日のことを
ぼんやりと僕は また思い出してる
ほこりまみれで痩せて頼りないくせに
まんまるな目で僕を睨みつけてた

名前をつけて 呼べば君は応えて
新しい暮らし ふたりは仲良し

毎日おもしろい 思いがけない
昨日も今日も たぶん明日もあさっても
泣いたり笑ったり めくるめく日々
魔法みたいに 全部つながって転がってくのさ


付箋をつけて 思い出たばねて
記念日だらけの 僕らのダイアリー

毎日が愛おしい かけがえがない
一日中 「おはよう」から「おやすみ」まで
晴れたり曇ったり めくるめく日々
こんなふうに 僕ら絡まって繰り返すのさ

途方に暮れる日だってあるさ
眠れない夜だってあるさ
なんとなく「ニャン」と鳴く
なんとかなるから きっと大丈夫

毎日おもしろい まるで足りない
季節はいつも 早送りで過ぎてゆく
ねえあとどれくらい? 愛すべき日々
魔法みたいに全部つながって 転がってくのさ
全部つながって 転がってくのさ


作詞/作曲 山田稔明  
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2021年09月27日

猫町フェス2021閉幕

20日の本番から配信アーカイブ期間の26日(日)が終了し、怒涛の猫町フェス2021が幕を閉じた。「閉幕」という言葉が似合うなあと思う。実質2週間くらいこのライブのことばかり考えていたからかなりの脱力感がある。最後の夜はむぎちゃんのツイキャスを介してお客さんもメンバーもみんなであの時間を反芻。こういうのもコロナ禍以降のアイデアなのだと思うと、人間は案外どういう状況になっても面白いことや娯楽を作り出せるのかもしれない。結構強いし、負けない。

吉祥寺スターパインズカフェから届いた興行成績も予想を超えるものだった。また来年も続けられるんじゃないかなと思う。次はミュージカルかもしれない。今から準備しておこうと思う。

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2021年06月20日

Qui La La の夏物語

2014年6月19日に公開された「Qui La La の夏物語」。雨ふり水無月、桜桃忌も過ぎて。
イラストレーター中村佑介くんの絵に僕が詩を書いて、さらにそれをメロディに乗せたもの。
きらきらのサマーソングですね。ぜひこの時期に聴いてください。




Qui La La の夏物語 (作詞作曲/山田稔明)


雨ふり 水無月 桜桃忌も過ぎて
赤いチェリーは そっとソーダの泡に沈んでく

嗚呼、太宰ならこう言うさ
“ぼくらは恋と革命のために生まれてきた”と

ほら また 夏のはじまり
新しい読み切りのストーリー


猫の目 空模様 土曜日の放課後に
赤いマニキュア 人差し指かざして風を待つ

ねえ、あなたならどう言うの?
今宵は織姫と彦星の逢瀬 流れ星 きらら

今 ほら 恋のはじまり
めくるめく夏物語


ねえ、海まで連れてって
僕らはビニールプールのなかで夢を見る魚

ほら また 夏のはじまり
新しい読み切りのストーリー
今 ほら 恋のはじまり
めくるめく 夏物語  
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2021年06月16日

『mono』想いにふける

毎週恒例の「水曜日のインスタライブ」、山田稔明全詩集を頭から全部歌っていく企画は2002年GOMES THE HITMAN『mono』の佳境、そのハイライトともいえる3曲「笑う人」「忘れな草」「百年の孤独」を歌った。夜の11時に歌うにはなかなかカロリーの高い選曲だけど、時系列でやっていくことになってるから避けられないのだ。『mono』というアルバムは思い詰めた感じがする、とずっと思っていたけれど2005年の『ripple』も相当思い詰めてるし、結局『cobblestone』以降ずっと僕は思い詰めているのかもしれない。思い詰めてるけど楽しいこともあるし、嬉しいこともあるし、幸せを感じたり胸が痛くなったりする。それが人生なのだ。

次回で『mono』を完走/完奏、7月からは『omni』で、なんだかんだとても楽しみ。最新回アーカイブをインスタグラムのIGTVに公開しました。ぜひご覧ください。

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2021年04月28日

水曜日の雨の日には

いつも仕事部屋に組んである配信のシステムを先週末全部富山に運んだのを、また改めて組み直して定例「水曜日のインスタライブ」。急に部屋が広くてキレイになったな、と思っていたのも束の間、また元通りの混雑したスペースに戻りました。山田稔明全詩集を頭から順番に歌っていくインスタライブ企画は『cobblestone』のハイライト。「太陽オーケストラ」「シネマ」「keep on rockin'」とスケール大きめの重要曲3つを歌う夜。掃除をしていたら出てきた当時の写真、CDブックレットに使用された映画館に僕がひとりポツンと座っている写真は三軒茶屋シネマで観客入れ替え時にゲリラ撮影したものだった。2014年に閉館し60年の歴史に幕をおろした、今はもうない場所。

次回で『cobblestone』完奏し「maybe someday ep」に突入する。最新回をインスタグラムIGTVに公開しましたのでGWのおうち時間でお楽しみください。

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2021年03月19日

サン・ラーとラナ・デル・レイ

映画『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』を観にいった。アメリカの音楽家、詩人、思想家であるサン・ラーの映像作品だというくらいの認識だけを携えて、なんだかすごそうな感じ…と思ってスクリーンと対峙したわけだけど、おれ今これ何を見せられているのかと終始くらくらするようなギラギラと奇天烈な刺激的な映画だった。近年のBLACK LIVES MATTERと絡めて語ることも無理やりならできるかもしれないけれど、とにかく鮮烈でユニーク、時空の歪んだ宇宙的物語だった。「アフロ・フューチャリズム」と呼ばれる思想がある。音楽家に限らず黒人アーティストたちによるこの思想は、アフリカという精神的故郷を失った黒人が「宇宙人に連れ去られた」「本来はわれわれは宇宙出身だ」と自らの暮らしや文化のルーツを宇宙に求めることで、ピラミッドやファラオといった、エジプト文明もそのモチーフとなる。P-FUNK一派やアース・ウィンド&ファイヤーのビジュアルに伺えるが、今も連綿と続くアフロ・フューチャリズムの系譜に興味が湧いた。

この日街へ出たのはラナ・デル・レイの新しいアルバムを発売日に購入するためだった。一昨年サンフランシスコに行ったときにレコード屋に並んでいた前作『Norman Fucking Rockewell!』で完全に虜になってしまった僕にとって1年半ぶりの待望の新作。間違いなく今年の個人的最重要作である。映画を見終わったあとついにアナログ盤を手に入れて早足で家まで帰り、ターンテーブルにレコードを乗せて針を落とす。歌詞を目で追うとなんとオープニングトラックに「Like Sun Ra/I feel small/But I had it under control every time」というフレーズがあり「なんだこれは」とそのシンクロニシティにびっくりする。Lana Del Rey『Chemtrails Over The Country Club』、ものすごく重厚で美しいレコード。ずっと聴いている。

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2021年03月18日

水曜日のインスタライブ#11

水曜日恒例、全詩集『HOW SHOULD I SAY TO BE YOUR FAVORITE POET?』を頭から順にすべて歌っていく企画の11回目。ちょっとずつやり方がアップデートされてて、今回のアーカイブは音のミックスをこれまでとは違うDAW(音楽制作ソフト)でたどたどしくやったので、個人的には新鮮なところがありました。いい年になって新しいことを憶えるのはなかなか大変で、それでも理解したり攻略したりすると超うれしい。

「猫といた暮らし」はリズムマシンと、「お別れの手紙」はギタレレで。「train song」を歌うと旅に出たくなります。いよいよ次回で『weekend』も完奏。せっかくなので「雨の夜と月の光」はミラーボール回しながらもう一回歌いましょうね。インスタグラムのIGTVからアーカイブをご覧いただけます。

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2021年03月12日

もう二度と帰らない瞬間

1999年のメジャーデビューアルバム『weekend』はバンドの本格的キャリアの始まり。「聴いていたあの頃が蘇ります」とか「いつまでも色褪せない」とかよく言われます。それは自分にとってもそうで、20数年前必死に頑張ってレコーディングしたこととか、頭の中にある理想像を具現化できないままいびつな形でできあがっていくがむしゃらな歌たちを、それでも嬉しくてCDになるまでに何度も聴いたこととか、あの頃お世話になった人とか今も一緒にいる仲間とか、もう会えなくなった人なんかを一気に思い出す、記憶回想装置みたいなところがある。それはもう二度と帰らない瞬間だけれども、目を凝らして思い出に焼き付けてあるから懐かしい。

今週の「水曜日のインスタライブ」はついに『weekend』に突入。冒頭3曲、「光と水の関係」「長期休暇の夜」「何もない人」と歌ってみて、嗚呼なんとGOMES THE HITMAN的な、と思った。「長期休暇の夜」はあとで気づいたけれど全音下げで演奏してしまってて、次バンドでオリジナルキーでもっと息を切らして歌いたいなと思いました。インスタグラムのIGTVでアーカイブをご覧いただけます。

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2021年03月05日

ネオン、ストロボ、そしてフラッシュライト

木曜日にやった「水曜日のインスタライブ」。全詩集から全曲歌う企画の8週目。『neon, strobe and flashlight』を歌い終えて、さらに『rain song ep』の3曲も駆け抜けた。自分のキャリアにとって大きな意味をを持つ4曲だったような気がして、なかなか充実した走馬灯のような40分弱だった。いよいよ次回から『weekend』に突入である。

『neon, strobe and flashlight』の締めくくりにブックレットに掲載されている詩を朗読しようとしたら文字が小さすぎて(実際は暗かったからだな)うまくよめなかったのが残念だったので以下に書き記したいと思います。水曜日のインスタライブは山田稔明のインスタライブ IGTVでアーカイブをご覧いただけます。

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ネオン、ストロボ、そしてフラッシュライト

いつも気付くと夕方で
僕の街のネオンサインは
どこか正常ではない昂揚の媚薬を
僕らの世代にふりまいたりする。

カメラのストロボは
二度と再生する事ができない瞬間たちに
フラッシュライトをふりまいたりする。

それから僕らは窓の外にネオンを見ながら
パズルピースのようなもので
隙間だらけの記憶を埋めていったりする。


GOMES THE HITMAN 山田稔明  
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2021年02月25日

お気に入りの詩人

定例「水曜日のインスタライブ」のアーカイブを公開した。物販の宣伝や冗長な部分をカットした編集版になっていて、インスタグラムのIGTVからご覧いただけます。メジャーデビューミニアルバム『neon, strobe and flashlight』から「ストロボ」、基山でのコンサートに続いてまた「夕暮れ田舎町」、そして「アップダイク追記」と3曲を演奏。アルバムタイトルについて、そのネタ元がサイモン&ガーファンクルの「Sounds of Silence」だという話を冒頭にしているけれど、自分にとっての「FAVORITE POET」は間違いなくポール・サイモンである。今も昔も自分にとってソングライティングとは詩作のこと。初期の楽曲を歌いなおすと改めて自分が目指した目標を再確認することになる。まだまだ辿り着けないけれども。

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山田稔明|インスタグラム  
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2021年02月18日

インディー時代を完奏|水曜日のインスタライブ

今年に入って山田稔明全詩集「HOW SHOULD I SAY TO BE YOUR FAVORITE POET?」を頭からずっと演奏するという企画になった毎週水曜日23時からの「水曜日のインスタライブ」。今週は京王百貨店催事の設営のあと、バタバタしながら仕事部屋に戻ったのでなんだか落ち着かなかったのですが、もともとインディー時代の作品は落ち着きのないCDたちなのでちょうどよかったかな。「溶けて死ぬのさ」「coffee」「恋はワイルドシング」「universal student」と4曲演奏して『down the river to the sea』全曲をさらいました。「universal student」という意味深なタイトルのネタばらしは初めてだったんじゃないかな。

インスタグラムのIGTVにこれまで全6回分すべてアーカイブしてあります。ぜひ歌詞を眺めながらご覧ください。

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2020年12月21日

ダブル・ファンタジー展

なんとか12月のうちに、と思っていたジョンとヨーコの「ダブル・ファンタジー」展に行ってきた。自分の誕生日がジョンの命日である僕にとって(1980年12月8日に僕は7歳になった)ずっとビートルズよりもジョン・レノンのほうが大きな存在だったからビートルズの代表作を聴くよりも先に『ジョンの魂』とか『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』とか、なかなか子供には難しいアルバムを聴き漁っていた。高校生の頃一番好きだったのは『心の壁、愛の橋』で、それはジョンがヨーコと離れてめちゃくちゃな生活をしていた「失われた週末」の季節に作られた作品だったことを後で知る。

ジョンは40歳までしか生きなかったから、自分が40歳を越えてからはなんだか不思議な感覚だったんだけど、今回の展示で一番最初の年表を見て、ジョンが40歳で死んだときにヨーコは今の僕と同じ47歳だったということに気づいて、ぐっとヨーコにそれまで感じ得なかった親近感を持った。その感覚のなかで数時間かけて展示を見て、嗚呼、ジョンはジョンだけでは「ジョン・レノン」にはなれなかったんだなあと改めて思った。ジョンが生きていたら今年で80歳で、ヨーコもそれより7つも上。ヨーコの記憶や想い、ヨーコの中のジョンの魂があと何年も、いつまでも残ったらいいな、などとないものねだりをしてしまう。

素晴らしい展示だった。みんな見にいくといい。来年1月11日まで。

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2020年09月17日

思春期に立ち返る音楽

僕が人生において一番好きなバンドはR.E.M.である。そしてR.E.M.に関して熱心なコレクターでもある。なかなかR.E.M.の話で盛り上がれる人っていないもので、もうすでに解散したバンドだし、だからいつも1人か2人のR.E.M.友だちと「そういえば」という感じで話をする。僕のR.E.M.友だち達は引っ越しとか断捨離とか、人生の岐路に立ったときに僕にR.E.M.グッズを段ボール箱で送ってくる。例えば雑誌とかCDとかTシャツとか。先日久しぶりにR.E.M.宝箱が荷物として届いた。もはやオフィシャルリリースされているCDの類は持ってないものはないからそこはアレなのだけど、日本盤だったりヨーロッパ盤だったり、プロモオンリーのものだったりで結局ワーキャーいちいち喜ぶことになる。

今回の宝箱にはブートレグの映像作品がたくさん入っていて、結局僕はこの数日間ずっとR.E.M.の映像を見続けていて、そうすると中学2年生のときに初めて「世界の終わる日」という曲のビデオを観たときに立ち返るし、日本武道館公演の荒い海賊盤もあったのでついつい見入ってしまって、ああ、おれR.E.M.が好きでホントよかった、幸せだなあ、というふうに静かに感動する。きっとこれからもずっと聴くのだろう。ということで、降って湧いたような、あるいは結局いつもと変わらないような、R.E.M.ブームの秋を迎えているところ。

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2020年06月28日

映画「ア・ゴースト・ストーリー」とフィービー・ブリッジャーズ新作

テレビで2017年の映画「ア・ゴースト・ストーリー」というのをやっていた。冒頭からすごく惹き込まれる物語だったのだけど、くたびれた一日だったのと長回しのシーンが多かったのとで途中で寝てしまった。あらためて昨日観直してみたら、やっぱりとても良かった。ここ数年で何番目というくらいだった。音楽家の主人公は映画の冒頭であっけなく交通事故で死んでしまい、主演ケイシー・アフレックはその後だいたいずっと(回想シーン以外は)白いシーツをかぶった幽霊として無言でスクリーンに立ち尽くしている。生き別れたルーニー・マーラ演じる妻も多くを語らないし、生と死を境目にパラレルワールドが交わることもない。観終えた今も、もう一回あの世界観のなかに身を浸したいと思うような映画は久しぶりだった。多分これから好きな映画を語るときに必ず言及する作品になると思う。

この映画に惹かれた要因はその幽霊のビジュアルがフィービー・ブリッジャーズのデビューアルバムの(アーティストAngela Deaneが手がけた)ジャケットアートワークとの共通点にあったかもしれない。リリースになったばかりのセカンドアルバムで、フィービー・ブリッジャーズは今回は骸骨のボディスーツを着て世界の終わりのような場所で星空を見上げている。再生ボタンを押して何秒かで「これはやばいやつだ、傑作だ」と身震いするような、想像以上のレコードだ。このアルバムも生と死を行き来するような幻想譚が10曲収められていて、毎日毎日、日が暮れてからはずっとこればかり聴いている。

ふたつの作品がリンクした有意義な週末だった。

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2019年06月30日

上半期よかったレコード5選

認めたくない事実だけれど、今日で2019年の半分が終了して、明日から後半が始まる。いつも思うことだが、なんと時の流れの早いことか。今年もたくさんレコードを買ってターンテーブルの上で取っ替え引っ替えして、音楽に励まされ生かされているなあ、と実感する。フィービー・ブリジャーズ、コートニー・バーネット、アンディ・シャウフと素晴らしい来日公演も目撃することができた。買ったレコードを全部インスタグラムに記録しているので、それを辿りながら今年上半期によかったレコード(新譜)を5枚メモしておきたいと思う。

まず圧倒的ナンバーワンはTHE NATIONALの『I AM EASY TO FIND』。もうずっとこればっかり、毎日聴いている。来年三月に待望の来日公演が決定。

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で、コナー・オバーストとフィービー・ブリッジャーズがBETTER OBLIVION COMMUNITY CENTER名義で突如リリースしたコラボ作。来日公演でサインをもらうときに「コナー連れてまた日本に来て」と懇願したらニコッと笑って「Sure!」と答えてくれたフィービーの可憐さ。

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VAMPIRE WEEKENDの久々のアルバム『Father Of The Bride』も期待以上だった。カーステレオで大きな音で聴くと最高なのです。

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オーストラリアのシンガーソングライター Stella DonnellyはデビューEPがとてもよくてフルアルバムが楽しみだったアーティスト。『Beware Of The Dogs』は弾き語りのデビュー作から一転カラフルなサウンドで楽しい。フジロックのステージに期待。

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ブルース・スプリングスティーンはいつの時代も素晴らしいが、69歳にしてこんな瑞々しい作品を生み出し世に問う音楽家としての凄みに感動した。僕が一番好きなボスは1987年の『Tunnel of Love』だったけれど、もしかしたらそれを超えたかもしれない。

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下半期もいっぱいレコードを買うのだろうな。音楽って本当にいいものですね。  
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2019年06月18日

Qui La Laの夏物語

5年前の6月に録音したのがこの歌。こないだ映画館、本編が始まる前の予告で「人間は恋と革命のために生まれてきた」という台詞、そして言葉が大写しになりびっくりした。それは『人間失格 太宰治と3人の女たち』という映画の特報だったのだけど、あたかも自分が発明したフレーズのような気になってしまっていたことに自分で驚いた。それは太宰治の名言を引用した歌詞だったのだった。毎年6月になるとハッと思い出す瞬間が訪れる。明日は桜桃忌。太宰の墓石に鮮やかなさくらんぼが埋め込まれるのだろう。



『pale/みずいろの時代』に収録  
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2019年04月28日

平成最後の大収穫という個人的な話

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昨日のこと、お昼過ぎに音楽ライターの友人からメッセージが届いた。「山田くん、このレコード探してるって言ってなかったっけ?」と送られてきた写真はイギリスはスコットランドのトラッシュ・キャン・シナトラズが1993年に出した『I've Seen Everything』のアナログ盤だった。こ、これは、もう僕が10年以上ずっと探してて、ウォントリストのトップに常に鎮座するレコードなのであった。奇声も自然ともれていたであろう、僕はすぐさま「どこ!?いつ!??」と興奮して返事。30分前に下北沢の中古盤屋にあった、となると居ても立ってもいられない。

夕方からギャラリー自由が丘でのライブだったのだけど、身支度を急いでバタバタと下北沢へ。お願いします神様、もう今、欲しいレコードは『I've Seen Everything』だけなのです…とかなんとか心の中でぶつぶつ言いながら。そして果たして、僕はついにトラッシュ・キャン・シナトラズ『I've Seen Everything』を手中に収めたのだった。1万円札を何枚も使う覚悟のあった1枚なのに、拍子抜けするくらいの値段で。レコードの神様はいると思った。僕のアーバンブルーズへの貢献。LPジャケットをちらちら見ながら僕はそのまま自由が丘に向かったのでした。

このレコードが出た1993年は僕がGOMES THE HITMANを結成した年、26年前のこと。このレコードを聴いて僕はGOMES THE HITMANをこんなふうな、キーボードを擁するギターポップバンドにしたいと思ったのでした。もちろんCDでは20余年ずっと聴き続けている名盤だけど、ターンテーブルにのせて針を落として聴くのは全然違う。自由が丘から帰ってきてすぐ聴いた『I've Seen Everything』は美しく空気を震わせていました。間違いなく平成最後の大収穫、連絡をくれた友人に心から感謝を。音楽って本当に素晴らしい。好きになった歌は僕を裏切らないし、心を元気にしてくれる。

  
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2019年03月31日

終わりと始まりのテーマソング|年度末と4月の始まり

山田稔明/calendar song




山田稔明/bon voyage〜終わりなき旅の流浪者

  
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2019年02月27日

消えない余韻|なんということでもないフィービー・ブリッジャーズの話

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1週間経ったけどまだふわふわしている。フィービー・ブリッジャーズの来日公演が素晴らしかった。フィービー・ブリッジャーズを知ったのは昨年初めのこと。Twitterでスピッツのディレクター竹内さんと交わしたイーサン・グルスカの話題がきっかけでデビュー作『Stranger in the Alps』を手にしたのだけど(ライブ1日目、僕のすぐ隣で観ていたのはその竹内さんではなかったかな)誇張でもなんでもなく、その日からほぼ毎日このレコードを聴いた。歌詞を読んで思いこまされたり、一緒に小さな声で歌ったり、たくさんの音楽に触れる日々にもこれほど熱心に対峙する作品というのは稀だ。2018年初頭からの僕の心にその歌が完璧にマッチしたわけである。忙しさにかまけて「2018年に聴いた音楽ベスト」というのを2月末になっても記事にできず下書きのまま手付かずになっているのだけど、当然この2017年の終わりに出たフィービー・ブリッジャーズの作品は、だんとつで僕の2018年ベストレコードとなりました。

そのフィービーが急遽来日するという報せが届いたのが先月、中学生みたいに時計を見ながら抽選に応募してチケットを手に入れて、あっという間にライブ当日となり、興奮して出かけた。こんなふうにワクワクするのっていつぶりだろうか。結構前の方まで攻めて「あの場所に立つんだな」と想像しながら開演を待つ。ギタリストのクリスチャン・リー・ハトソンによるオープニングアクトも素晴らしかったが、スラッシュメタルの轟音を出囃子に主役であるフィービーがくすくす笑いながら登場してきたときの神々しさはすごかった。天使は存在した、みたいな感じかしらん。コーラスやベル、エレクトロデバイスさえ操るドラムのマーシャル・ボア、前述した控えめながら効果的なギターを添えるクリスチャン・リー・ハトソン、そしてフィービーのギターと歌という超シンプルな編成はYoutubeでも観たことのないアンサンブルで(オセアニア・アジアツアーのための編成か)、しかしそのシンプルさがとても歌を引き立てていて、ベーシストのいない自由さのようなメリットもあって、とにかくすべての歌が美しかった。スマートフォンのスクリーン越しに見るのがもったいなくて写真も撮らずにずっと目に焼き付けた。

2日目は相対性理論の永井くんと連れ立って出かけて、初日よりは少し後ろの方で、もうちょっと冷静にその世界観を堪能した。アルバムの曲はもちろん、ジュリアン・ベイカーとルーシー・ダッカスとのBoygenius、コナー・オバーストとのBetter Oblivion Community Centerの楽曲、ギリアン・ウェルチのカバー、そして初めて聴く新曲など。才気あふれる、というのはこういうことか。とめどなく歌や言葉が溢れてくる季節なのだろう。ステージの上では震えるほど美しく見えたフィービーは、しかし、終演後のサイン会で目の当たりにすると小柄で可憐な24歳の女の子で、リクエストした猫のイラストを悩みながら時間をかけて描く仕草がとてもかわいかった。最高の2日間だった。時間が経ってもまだ消えない余韻のなかにいる。

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2018年11月28日

なんということでもない、テイラー・スウィフトの話

テイラー・スウィフトの来日公演から1週間が過ぎた。その日のことを、どうでもいいことも含めて書き留めたいと思います。個人的備忘録としても。テイラーの来日公演は今回東京ドームの2日間でした。初めて観たのは2014年さいたまスーパーアリーナでの『RED』ツアー、そして2015年の東京ドーム『1989』ツアー、そして3年ぶりの今年。正直言うと、もうこれまで2回とても満足のいくコンサートを良い席で観てるし去年出た新譜をそんなに聴き込んでいないこともあって「なんだか忙しい時期だし、今回はパスかな…」と思っていたのだけど、やっぱり観ないと後悔するかも!ということになって急遽チケットを取りました。

後悔するかも、と思ったきっかけは「America's Sweetheart」と評されるほどに右も左もなくアメリカ全国民から愛される存在になったテイラーが初めての政治的発言をしてトランプの共和党不支持を表明したことでした。出自であるカントリー音楽というカテゴリーからはみ出して飛躍した彼女の、20代最後のワールドツアーになるだろうし、もしかしたら予想外の音楽的変容がこの後に続くかもしれない、と思うと今回の大掛かりなステージはやっぱり観逃せない!ということになったのです。

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ライブ当日(初日に行きました)僕は朝から出かける用事があって、そこは東京ドームから一駅の街でした。SNSで呟かれる「テイラー物販の行列、ヤバイ」という、その現場を僕は見たくなった。最近の大きなコンサートの例にもれず、開演にあわせて出かけていってもグッズを買うことは無理だろうなと思っていたのですが、天気がとても良い日で寒くもないし、東京ドームシティのジェットコースターや観覧車からはとても楽しげな声が聞こえる。なんだかワクワクしながら「最後尾」と掲げられたところに並ぶと、来日公演は東京2公演だけなので当然日本中からテイラーファンが駆けつけているわけです。親子連れ、カップル(女性主導)、スーツケースを引きずる人、中国や韓国、アジアから来た人たちもそれぞれの言語でおしゃべりしている。

列に並ぶ僕のすぐ前には広島から来たと思われる女の子二人、そのよく通る声の方言と話が興味深く「ウチ、こないだ元彼と会うたんじゃけど、わやくちゃにケンカしてもーてー」「そんな言わんと、より戻したらええがー」とか、職場の噂話とか、そういうどうでもいいことを語られる感じがすごくテイラー・スウィフト的というか、とても新鮮で、気づいたら1時間が経っていて僕はグッズ売り場にたどり着いたのでした。欲しいものがあったかというと、そういうわけでもなくて(今テイラーはちょっとタフでハードなヤンキーモードなのですよね)、なんとか着やすそうなTシャツと、これが一番面白いなと思ったヘビ柄みたいなギラギラしたサングラスを購入。車の運転のときにかけたいと思います。

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一旦帰宅して少し休んで、再び東京ドームへ。日もとっぷり暮れて光溢れる街。会場全体を見渡せる席で、今回も連動式のLEDリストバンドを腕にはめて開演を待つ。で、内容はもう完璧なエンターテイメントで、一瞬たりとも退屈することなく、ダイナミックなダンスも、ステージセットも映像も、新旧含めたセットリストやアレンジも圧巻なものでした。少しでも行くのを躊躇したことを謝りたいくらい。EDM最先端なトラックでも、ギターの弾き語りでも、すべてがテイラー・スウィフトらしくてさすがだなと思いました。今年観たコンサートで一番かな。「テイラー・スウィフト好きだなんて意外だ」とよく言われるけれど、テイラー・スウィフトを好きじゃない人がいることのほうが僕には不思議なのですよ。「Taylor Has Nine Cats' Lives ―僕らが彼女に夢中な理由」という書き下ろしエッセイを寄稿した本はこれ。その日以来、去年出た『Reputation』というアルバムを遅ればせながらずっと聴いています。とても良いです。

以上、誰に言うでもない、なんということでもない、テイラー・スウィフトの話でした。

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2018年11月02日

7年目の『Christmas Songs』|ゆっくり長いクリスマスフェアのはじまり



11月になりました。ハロウィンが終わり、街は一気にクリスマスムードに。2012年にリリースした『Christmas Songs - standards and transferes』は7年目の冬を迎えます。誰もが知っているクリスマススタンダードをギター、マンドリン、バンジョー、鍵盤ハーモニカ、そして弾けないバイオリンまでをあれこれ駆使して山田稔明がひとりきりで作り上げたあたたかなクリスマスアルバム、ジャケットは『新しい青の時代』と同じく福田利之さんによる描き下ろし。今年もどうぞよろしくお願いします。

本日よりクリスマス特典として、注文分にはポストカードやステッカーや、クリスマスギフトをいろいろおまけして発送します。お持ちでない方、この機会をぜひお見逃しなく。そしてすでにお持ちの方もプレゼントにとてもいいアイテムだと思いますのでもう一枚ぜひ。ひとりきりで作り上げた、と前述しましたが、相棒ポチが手伝ってくれたことを忘れてはいけません。彼女の声がたくさん聞けるという意味でもこれは自分にとってとても大切なレコードです。ぜひみなさんの冬のBGMに。


『Christmas Songs -standards and transfers/山田稔明』
(全12曲入り/2,000円税別/2012年発表 2013年全国流通/GTHC-0003)


“Christmas Songs 〜standards and transfers”
山田稔明、キャリア初めてのクリスマス・アルバム
フォーキーなサウンドで織り成す全12曲

<全曲解説>

1. somebody’s coming(introduction)
誰かが寒い冬に突然訪ねてきたときに穏やかなコーヒータイムのBGMになるようなレコードにしたいなと思いました。クリスマスの始まりです。オルゴールと鈴が180度のサウンドスケープで。

2. joy to the world
ご存知クリスマス・キャロル「もろびとこぞりて」を笛や鍵盤ハーモニカ、ウクレレとたくさんの声を重ねて。2009年の冬に録音し2012年にリミックスしました。

3. jingle bells
左右に踊るアコースティックギターに導かれて手拍子と足踏みを。「ジングルベル」は記憶の底にある子どもの頃を撹拌する魔法の杖のようなメロディです。2008年に録音したものの素材を録り直しビートを足してリミックスを施しました。

4. oh my darling, clementine
「雪山賛歌」として知られるアメリカ民謡、歌の内容はゴールドラッシュに沸く西部開拓時代の物語でクリスマスと関連のない曲なれど中国では新年を祝うお正月ソングだそう。2010年に録音したものにシンセをダビング、ホーリー感増しました。

5. wish you a merry christmas
クリスマスのライブで配布するために2005年に誰にも頼まれずにひとりで多重録音したスタンダード曲。このクリスマスCDのきっかけとなった1曲です。ステレオ感が増したサウンドに変身。

6. greensleeves
郷愁をそそるメロディは冬の帰り道を想起させます。「御使いうたいて」の歌詞を伴ってクリスマス・キャロルになりますが僕はスキャットでメロディをなぞりました。2010年に録音したものをリミックス。

7. when the saints go marching in
底抜けに明るいメロディと「聖者の行進」というタイトルからクリスマス曲と思われがちなこの歌、実は黒人霊歌をルーツとする葬送曲。僕はギターをかき鳴らし賑やかな賛美の歌に。今年新録した楽曲です。

8. the first noel
「牧人ひつじを」というタイトルで知られるこの歌、起源は13世紀まで遡るそうです。クリスチャンではない僕でも神聖な気持ちになるとても美しいメロディ、たくさんのハーモニーを添えました。このCDのための2012年新録曲

9. symphony no.9(ode to joy)
年末になると街中で奏でられるベートーベンの「交響曲第9番」第4楽章に日本語詞をつけて歌いました。旅の門出に立って力強く宣言するような歌になりました。2009年の録音。「旅路」「家路」のテーマの上にあります。

10. amazing grace
18世紀から歌われている賛美歌をフォーキーに。中古で買ったバイオリンを下手くそに弾いているのは僕。後半からは「グロリア(荒野の果てに)」と年末の街のざわめきが溶け合います。2007年に録音したものですがボーカルを録り直し、後半のコーラスをすべてダブルトラックに。

11. silent night
2005年録音の「きよしこの夜」。鉄琴の音が氷の窓を叩くノックのよう。クライマックスで愛猫ポチが歌い出しますのでビックリしないでくださいね。

12. o christmas tree
「もみの木」として知られるメロディに日本語詞をのせました。2006年の冬の始まり頃の録音ですが録り終わると夜が明けていて鳥のさえずりが。窓を開けてそれを猫と眺めている風景でこのレコードはまた振り出しに戻ります。


arranged, performed and produced by Toshiaki Yamada

◎紙ジャケ仕様/ブックレット封入/帯付き
◎誰もが知っているクリスマススタンダードをフォーキーに織りなす季節感たっぷりの1枚です
◎全曲のアレンジ、演奏、歌、多重コーラス、録音とミックス、さらにはマスタリングまでの
全工程すべてを山田稔明が担当、まさにハンドメイドなあたたかいレコードです。
◎アートワークは『新しい青の時代』と同じく人気イラストレーター福田利之による描きおろし。

オフィシャル通販STOREで『Christmas Songs - standards and transfers』を購入


  
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2018年11月01日

30年とか25年とか20年とか|高橋徹也 吉祥寺スターパインズカフェ公演

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先週末のこと。自分のトラベラーズファクトリーでのライブが終わった後ですぐ吉祥寺に戻り、スターパインズカフェで高橋徹也の『夜に生きるもの/ベッドタウン』CDリイシューに伴うレコ発ライブを観にいった。こっちの都合も知っているであろうタカテツさんが何度か少なくない回数お誘いの連絡をくれたので「相当仕上がってるのだろうなあ…」と思ったし、圧倒的な楽曲群をキャリアハイとも言える今のバンド、ライブ体力で見せつけられるのだから嫉妬して落ち込むパターンのやつだな…と腹をくくって出かけたのだけど、隅から隅まで素晴らしくて、これは見逃したらダメなやつだったな、と震え感動した。

高橋徹也のライブを観ていると、音楽も佇まいも不穏だし、メロディはねじくれて気持ちのいい音符に落ち着いてくれないし、その詩世界は歪んでいて「この奇妙な歌のなかの住人にはなりたくないな」といつも思うのだけど、眉をしかめながら前のめりに惹き込まれている自分にも気づく。なんでこの人とこんなに仲良くなったんだろうな、と不思議になる。向こうもそう思ってるのかな。この数年はリリースの内容や方法など一番相談しあう相手がタカテツさんだ(あと、この人が自分と同じようにちょっとどうかしてるくらいレコードを買うところも信用してる)。今年ふたりともアナログ盤リリースに尽力して実現したことはずっと憶えている記憶になるだろう。20年とはとても長い長い時間。ともすれば忘れ去られてしまう空気の振動でしかない音楽を、会場満杯のファンとお祝いできた彼は幸せ者だ。

今年の夏に京都から帰ってくる車のなかで大きな音で一緒に聞いた「友よ、また会おう」という新曲を最後にやったのがよかった。ライブを観ていた友だちが「あれは山田のことを歌ってるんじゃない?」と言ってたけど、それは違うと思った。あれはすべての人に向けられた、照れたような、困ったような、しかしとても優しく友を鼓舞する笑顔のような歌である。彼のライブの翌日にソニーへ出向いて来年のGOMES THE HITMANアニバーサリーのための打ち合わせが始まった。自分のバンドが結成から25年とか来年でデビュー20年とかの節目を迎えようとしているこの頃、高橋徹也という人の活動はとても興味深い。  
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2018年10月31日

30年とか25年とか20年とか|デフ・レパード日本武道館公演

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先週のこと、日本武道館で行われたデフ・レパードの来日公演を観にいった。『ヒステリア』という1987年発表の名盤を全曲演奏するというライブだったのだけど、中2の僕はそのアルバムを隅から隅まで大好きだったのでどうしても観たかった。30年前のことだ。この『ヒステリア』は大ヒットしすぎてハードロック・ヘビーメタルという範疇から大きくはみ出したモンスターアルバム。満員の武道館は自分よりも年配の方が多かった。男性も女性も。みんな一様にワクワクして開演を待ち、「Woman」から始まる『ヒステリア』まるまるに大歓声があがった。

スタジアム級のバンドであるデフ・レパードに日本武道館はとても小さく感じた。目と鼻の先で30年前に夢中になった音楽が奏でられ、僕はきっと中学生みたいな顔で一緒にシンガロングしていただろう。喧騒を避けて一駅歩いてクールダウンしようと思ったけど、体の芯にはじわっと熱いものが残った夜でした。  
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2018年10月16日

b-flowerと10月の歌

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先週末の土曜日、高円寺でb-flowerのライブを観た。大学生の頃にCDを買って好きになって、数年前にまた出会い直して、ボーカルの八野英史さんとひょんなことから仲良くさせていただくようになったけど、バンドでの演奏を聴くのは初めてだった。25年のタイムスリップ、と呼ぶのがしっくりこないくらいに、大好きな歌「舟」ですべりだしたb-flowerは現在進行形のバンドだった。ノスタルジーの欠片もなく、揺るぎない普遍的な歌がステージでは鳴らされてハッと魅せられてしまう。八野さんは穏やかで優しいけれど、ステージに立つと胸の中に冷たい炎のようなものが灯っている人だ、と感じる。ニコニコ笑っているようで、その目は冷ややかに世界を見つめている。「つまらない大人になってしまった」も素晴らしかったし、八野さんが目に見えない毒をちょっとだけ音楽に盛る瞬間を目撃したような気がしました。バンドの演奏も素晴らしかった(皆さん優しかったな…)。b-flowerがもっと身近で、もっと大好きなバンドになりました。

まだ歌を聴き足りなかった僕は翌日、松陰神社前のタビラコで行われた細海魚さんと八野さん二人でのライブも観にいったのです。小さな空間にきゅっとみんなで集まってミツバチの羽音に耳を澄ます、そんな感じの素敵な時間。前日と曲かぶりはほとんどなく、季節柄聴きたかった「OCTOBER SONG」、「サトウカエデの下で」も聴けたし、魚さんのウーリッツアーの音がとても艶っぽくて、リラックスしてるのに緊張感がある雰囲気がとてもよかった。八野さんは「これ」とシャツをはだけてモリッシーのTシャツを見せてくれて、そこには8月に京都で一緒に歌ったTHE SMITHS「ASK」の歌い出し、「SHYNESS IS NICE(恥じらいって素敵だね)」と書いてあった。楽しくて幸せな一日でした。

いつかGOMES THE HITMANとb-flowerでライブができたらなあ、と妄想を。

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2018年10月15日

YO LA TENGOと『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』

YO LA TENGOといえば、何をおいても柴崎友香の小説「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」を思いだす。「高速道路のドライブは退屈だから嫌い」から始まる物語。

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 カーステレオからは、英語の、静かな男の歌が流れていた。
「なんや、この曲。寝起きに聞きたないような暗い曲やな。コロ助みたいな宅録オタクが作ってそうな曲やん。これ、コロ助の選曲か?」
欠伸しながらそう言ったぼくを、コロ助はくっくっくと声を殺して笑っている。伸びをして隣を見ると、ルリちゃんも笑っていた。
「これ、わたし用に作ってくれたテープ。この曲、今年のわたしのナンバーワンって感じに大好きな曲やねん。さすが、コロ助くんはようわかってるわ」
「あ、そうなん?」
「そう。歌詞なんかすごいええねんから。ほら、ここ。君が笑ったらぼくも笑ったような気分だ、君が泣いたらぼくは最悪な気分だ、って言うてるねんで。このよさがわかれへんかったら、わたしとは話、合えへんわ」
「そうなんや、そんなこと言うてるんや」
と言っても、急に歌詞なんて聞き取れなかった。
「そうかあ。そう言われると、ええ曲やなあ」
「うそばっかり」
「うそちゃうよ。なんか、この、落ち着いた感じがええやん。誰、誰?」
「ヨ・ラ・テンゴっていうアメリカのバンド」
「あっ、聞いたことある、その名前。うん、たぶん知ってるで。ほら、友だちのCD出したっていうてたやつが好きなバンドがそんな名前やった気がするなあ」
「もうええよ」
 ゆったりと、なんの苦もなく運転を続ける恵太は楽しそうに笑っていた。コロ助も笑って、それからルリちゃんも笑って、そのバンドの話をしてくれた。
ぼくもその曲が今年聴いた中でいちばんいい曲に思えた。


柴崎友香「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」(河出書房新社 2001)より引用


これはヨ・ラ・テンゴの2000年作『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』収録、トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』を下敷きに作られた「The Crying of Lot G」のことなのだけど、こういう、繰り返される静かなパンチラインがディスコグラフィーのいくつものカタログに渡って小さな儚い花を咲かせているような、そういう感じが彼ら独特の詩情であり魅力だと感じる。20年近く好きで聴いているこのバンドのライブを先週初めて生で体験した。なんで今まで行かなかったんだろうか。スケジュールとかタイミングの問題とか、わりと頻繁に来日してくれるからまた次の機会に、となっていたのか。とにかく今回の来日公演は新譜がとても良かったこともあってわりと早くチケットを押さえていたのだけど(ソールドアウト公演になっていた)もうすべてのシーンが素晴らしくて感動したし、楽しくて元気が出た。時間を遡りたいと思ったほど。こんなに心地いい静寂と爆音とノイズがあるだろうか。こういう瞬間や心の動きに気づかされるから音楽の持つ力は計り知れない。

このライブの2日後にメンバー3人がDJをするというので、夜中にクラブへ出かけた。ジェームズ、ジョージア、アイラの順に30分ずつ。こういう場所には本当に上手に可愛く踊る女の子たちがいて感心する。アナログレコードで流される音楽はどれも最高でiPhoneをかざして曲名を調べたり、ぎこちなくリズムを取ったりして楽しかった。人となりが滲みでるようなDJセットだった。ジョージアとすれ違うときにグラスを掲げたらニコッと笑って乾杯してくれて、背中をぽんぽんと叩いてくれて嬉しかったな。この10月という季節にヨ・ラ・テンゴを観ることができて本当に良かった。

君が笑ったらぼくも笑ったような気分だ、君が泣いたらぼくは最悪な気分だ。そのとおり。


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2018年09月27日

続・好きなものを好きでいつづけること

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今年の春に突如復活が告知されたストリートスライダーズのハリーと土屋公平(蘭丸)による“伝説”のユニット JOY POPS。ふたりが一緒に演奏するのはなんと18年ぶりとなる。これまでどれだけ頑張っても全然チケットが取れなかったのだけど、ようやっと手に入れた昨晩のビルボードライブ東京でのライブ、何ヶ月も前から楽しみにしていたのです。ハックルベリーフィンのさくちゃんとたけ兄と3人で並んで観ました。3人とも中学生みたいな顔してたんじゃないかな。ときおりアコースティックギターを手にするも、基本的にはふたりのエレキと歌だけのシンプルな演奏。しかし1曲目の「Bun Bun」から最後のストーンズ「Rip This Joint」風にアレンジされた「Boys Jump the Midnight」までずっと楽しくて一緒に歌った。歌詞も全部おぼえてた。声もギターもよく鳴って、想像以上によかったし、ノスタルジーのようなものをあんまり感じなかったのはスライダーズの楽曲が古くならないロックンロールだからだろうか。

僕が高1のときに初めて組んだバンドの名前は「Empty Heart」というんだけど、それはJOY POPSの曲名から取ったのです。からっぽの心。僕が特に好きな歌は「Angel Duster」とか「かえりみちのブルー」とか、ちょっと憂いがあるやつなので、この2人の編成で聴くとすごくグッとくる(もちろんスライダーズ編成でも聴きたいけど)。ふたりがニコニコ楽しそうなのが嬉しかった。MCも和気藹々としてて(信じられない!)「年を取るのも悪くない」という言葉が繰り返されて、僕もそう思いました。

終演後になんとサイン会がある!というのでたけ兄、さくちゃんと一緒にドキドキしながら時を待つ。ハリーは去年吉祥寺HMV record shopでインストアイベントがあったけど、サイン会にはなんとなく並べなかった。この日迷わず列に並べたのはステージ上の雰囲気がとても良かったからかもしれません。公平さんには3年前の秋にベースえびちゃんを介してお会いできて話をさせてもらっていたのだけど、そのときのことをちゃんと憶えていてくれて「よく来たね」ととても優しかった(そのときのブログ「好きなものを好きでいつづけること」)。ハリーも穏やかな笑顔、ハリーと握手できるなんて思いもしなかった。僕が持参していた1988年の5周年記念本を見てニヤリと笑った。興奮冷めやらぬまま外へ出ると土砂降りの雨だったけれど僕はふんふんと鼻歌を歌いながら、気分良く帰路を辿ったのでした。

帰宅してもハックル2人と感想を述べ合ったり、九州の旧友に報告したり。音楽はタイムマシンのようで、宝探しにも似ている。あなたが好きになったものはきっとあなたを裏切らない。

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バリ島といえばスライダーズの「風が強い日」なのです。夏休み中のバリでも耳の奥で何度も蘭丸のスライドギターが聞こえた気がした。ああ、だからおれバリ島に行く運命だったのかな、とか都合よく今日は考えている。今から30年前にバリ島で撮られたこの曲のMVのなかの風景は、こないだ行ったバリとほとんど同じでした。


  
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2018年07月29日

『mono』を回想する・後編【00-ism】

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前編に続けてお読みください。2002年リリースの『mono』を回想します。

『mono』に収められた楽曲のうちのいくつかは「饒舌スタッカート」をリードシングルとする“来たるべきニューアルバム”のために書かれたものだった。「夜明けまで」「笑う人」、そして「情熱スタンダード」はタイトルからして「饒舌スタッカート」と対になっている。「夜明けまで」に(情熱スタンダード vol.1)と副題がつけられたのもそのせいだった。次作に収録されることになる「20世紀の夏の終わり」ももう完成していたし、僕らが2001年にBMG JAPANからもう1枚アルバムを出していたらどうなっていたかな、と思う。「忘れな草」で歌われる「このままこのときがあと2年も続けばなあ」の “2年” はレーベルとの2年契約を更新したかった僕の心の叫びだったかもしれない。

しかし、そのラインナップに「目に見えないもの」や「別れの歌」といった淡々と情景と心情を歌う静かな歌が加わる。「百年の孤独」はMac & Wendysという課外活動バンド(メンバーは僕、PLECTRUM高田タイスケ、セロファンの高内シロウと溝渕ケンイチロウ、そしてライターの山田ゴメスさん)でのライブのために僕が書いた曲だった。ポール・オースターの小説とソフィ・カルという芸術家の著作『本当の話』をモチーフにして書いた「言葉の海に声を沈めて」はこれまでのGOMES THE HITMAN楽曲とは異なる雰囲気の歌になった。内なる声と発せられる声、と考えたときにSmall Circle of Friendsの東 里起さんをゲストに迎えたいと思って、渋谷クアトロでのライブを観たあと出待ちをして依頼したことを忘れない。

レコーディングはまずリズムとベーシックトラックを駒場東大前のスタジオで録った。緊張感のある現場だった。僕はニコリともしなかったんじゃないかなと思う。サポートギタリストのアッキーが緩衝材のようにみんなを和ませる、というのが『mono』から『ripple』まで続くことになる。アッキーには本当に苦労をかけたと思う。細かいダビングやボーカルレコーディングは中野富士見町にある小さなスタジオで録ったので、今でもそのあたりを車で走るとあの頃の記憶が蘇る。アルバム最後を飾る「表通り」はバンドでの演奏を放棄した曲だ。この曲を録る日はメンバーが揃わなかったはず。今聴くと口笛が聞こえるのだけど、僕は今も昔も口笛をうまく吹けない。これは誰の口笛だろうか?と思い出せないでいる。当時のディレクターかな。このあたりの記憶は混沌としたまま。

最後の最後に「6PM intro」ができた。僕がハードディスクレコーダーでひとりで作ったサウンドトラックが『mono』の始まりを告げる。旋律はR.E.M.の「Perfect Circle」を下敷きにしている。このアルバムに取りかかるタイミングで僕は池袋から武蔵野へと引っ越したのだけど、「6PM intro」の始まりに聞こえるのは吉祥寺の夕刻の鐘の音だ。本当は17時の鐘の音なので五回鳴ったのをコピーペーストで一回分増やしてある。雑踏、自転車のブレーキの音、誰かの声、それは2002年のある日にうちの近所でフィールドレコーディングした素材なのだけど、それまでもそれからも、そして今でも普遍的に毎日繰り返される暮らしの音であり、このレコードはそういう普遍的な風景から幕が開くのが相応しいと思ったのだ。

『mono』というタイトルは制作終盤に僕が決めた。なんでそれまで『mono』じゃなかったのかというくらいこの作品を言い得ていた。アルバムジャケットも象徴的で、オリジナル盤はビニールカバーでくるまれた他に類を見ない装丁に。とてもストイックなものを作ったという感覚があったのだけど、僕が想像していたよりもセールスは好調だったように思う。関東で7ヶ所、関西、中部でもインストアライブを重ね、レコ発ライブは渋谷クラブクアトロにて、東 里起さんをDJとゲストボーカルに迎え、アッキーを含む5人編成で演奏した(大阪はバナナホール、名古屋はメトロ館)。『mono』の好評を受けてライブ活動にも拍車がかかり、2002年はキャリア史上においてライブ元年と呼べる年だったなと振り返る。




  
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2018年06月26日

一本の音楽をいくつも束ねて

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昨日のこと、GOMES THE HITMANのリハーサルをお昼から夕方まで。今回13年ぶりの新録盤『SONG LIMBO』の先行発売ライブなので、そのなかからの楽曲が中心になるのだけど、せっかくだから“LIMBO=天国と地獄の間の辺土”をまだまださまよい続ける曲にも光と風を当てようということになり、結果としてレアすぎる内容になっている。「饒舌スタッカート」はもちろん、「手と手、影と影」も「夜明けまで」も「愛すべき日々」もやらない。お客さんのなかには1曲も知らない、という人もいるのではないだろうか。僕らもわくわくしている(そしてやりなれてないからヒーヒー言ってる)。

隣のスタジオでは村田和人バンドが7月2日から始まるレコ発ライブツアーのための練習をしていたので挨拶、そのまま僕はそちらの練習に参加した。ちょうど完成したばかりのCDをいただいた。村田さんが最期まで取りかかっていたアルバム『ド・ピーカン』は村田バンドと仲間たちの尽力でついにその全貌がもうすぐ明らかになる。7月2日発売。村田さんらしいビッグスマイルが嬉しい。このレコードにはこういうジャケットが似合う。村田さんの不在を感じると同時に、確実に“ここにいる”という感覚が共存していて、聴き入ってしまうのです。GOMES THE HITMANは2曲担当、村田さんにも褒めてもらえるような仕上がりになったと思います。吉祥寺スターパインズカフェでのライブはパンパンの満員ソールドアウトだそう。神戸と京都はまだチケットがあるかもしれません。僕はすべての公演に参加、スターパインズカフェではGOMES THE HITMANでの演奏になります。CDもライブもぜひに。




KAZUHITO MURATA & HIS FRIENDS
『ド・ピーカン』発売記念ライブ ツアー


2018年7月2日(月)@ 神戸 VARIT
2018年7月3日(火)京都 都雅都雅
2018年7月4日(水)東京 スターパインズカフェ【SOLD OUT!】


出演:村田バンド
member:山本圭右[Gt,Vo]、湯川トーベン[Ba,Vo]
向山テツ[Dr]、小板橋博司[Per,Vo]、友成好宏[key]

guest:杉真理[Vo,Gt]、村田彼方[Dr,Vo]、山田稔明[Vo,Gt]
(東京公演はGOMES THE HITMANでの出演)

全公演とも18:30開場 19:30開演
前売 5500円(+1drink)当日6000円+1drink(整理番号順入場・全自由)


チケット発売日:5月12日(土)
<配券情報>
VARIT:店頭販売 / ローソン(Lコード:57117) / e+ / チケットぴあ(Pコード:117-020)
都雅都雅:店頭販売 / ローソン(Lコード:51909) / e+ / チケットぴあ(Pコード:117-025)

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神戸 VARIT
〒650-0011 神戸市中央区下山手通り2-13-3建創ビルB1F
TEL:078-392-6655

京都 都雅都雅
〒600-8031 京都市下京区寺町通四条下ル貞安前之町613 火除天満宮B1F
TEL:075-744-1497

東京 吉祥寺 スターパインズカフェ
〒180-0004 武蔵野市吉祥寺本町1-20-16B1
TEL:0422-23-2251  
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2018年05月23日

音を刻む|『新しい青の時代』アナログカッティングを目撃

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昨日のこと、午前中から出かけて東洋化成の末広工場というところで、『新しい青の時代』アナログ盤の「カッティング」という作業に立ち会う。いよいよこの日がやってきたのだ。5年前にこのアルバムの全曲をミックスしてくれた手塚雅夫さん(その後の『the loved one』も『DOCUMENT』でもお世話になっています)が同行してくれたのでとても心強かったが、手塚さんも長いキャリアにおいてアナログカッティングは30年以上ぶりとのことで、僕同様にワクワクしていらっしゃったのが印象的でした。末広工場はおおよそ音楽とはなんの関係もないような無機質で派手なところが一切ない建物。僕らは緊張しながら足を踏み込んだ。

カッティングを担当してくれたのは西谷さんという10年のキャリアを持つ若々しいエンジニアさんでした。曲間の秒数なども改めて設定しなおした。2018年の気分を重視。僕も手塚さんも音については西谷さんにお任せする。僕は「魔法をかけてください」とすらお願いし、西谷さんは「わかりました」と笑顔。曇りひとつないラッカー盤に『新しい青の時代』の音をサファイアが刻んでいくのを不思議な気持ちで眺めていました。すべての行程が初めてなので僕は工場見学に来た子どものようだったかもしれません。

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刻んだ溝を顕微鏡で確認し、いよいよ試聴。最初に聴いたのは「月あかりのナイトスイミング」でしたが、その豊かな音に感動しました。CDとレコード、どっちがいいとかそういうことじゃなくて、改めて音楽とは空気の振動だなと、針が溝を擦る音に耳を澄ましながら思ったのです。あったかい音、というと使い古された言い方に聞こえるかもしれませんが、静かな熱を感じました。そしてA面についても同じ作業。オープニングトラック「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」は歌詞が違うバージョンに差し替えたので、改めて聴いてみると感慨深いものがありました。A面も通して試聴。もう何も言うことのない素晴らしいサウンドでした。インスタグラムにも写真や動画を投稿しています。この記事の写真は手塚さんが撮ってくれたもの。ふたりとも嬉しくて何度もシャッターを押したのです。

テストラッカー盤は僕が持ってかえっていいことになり、いわゆる普通のヴァイナルよりも重いその円盤をそっと胸に抱きしめる。手塚さんも「5年経ってるのに、今も最高に良いアルバム」と言ってくれました。3時間と少しくらいの作業だったでしょうか、夢のような時間。またここに来てカッティングしたいなと欲が出てきた。帰宅後、自分のオーディオで聴くラッカー盤『新しい青の時代』はまた違う表情を見せます。再生環境によって変わってくるのもレコードの面白いところです。近藤さんに連絡して近藤さんのスタジオでもレコード試聴をさせてもらっていたらあっという間に日付が変わりました。

『新しい青の時代』アナログ盤クラウドファンディングはじわじわと申込が増えて、現在111%と縁起のいい達成率、残り38日となりました。どれだけ興奮を書き連ねても、どれほど通じるかわかりませんが、とにかく生まれて初めて自分が作った音楽がレコードになった、長い長い一日でした。今日はジャケットの入稿日、皆さんにお披露目する日が刻一刻と近づいています。ぜひ楽しみにお待ち下さい。


TWIN MUSICサイトでクラウドファンディングに参加


山田稔明『新しい青の時代』アナログ盤

2018年7月25日 発売/GTHC-0014/価格 3500円(税込)


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1.どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと
2.一角獣と新しいホライズン
3.光と水の新しい関係
4.予感
5.平凡な毎日の暮らし

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1.月あかりのナイトスイミング
2.やまびこの詩
3.光の葡萄
4.日向の猫
5.ハミングバード


all songs written and
produced by Toshiaki Yamada
originally released on July 7, 2013
  
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2018年04月16日

コーチェラの日曜日



昨日のこと、カリフォルニアの砂漠で開催される恒例のコーチェラ・フェスティバルの生中継を観始めたらついつい見入ってしまって、やらないといけない仕事がたくさんあったのに全然手につかなくなって、First Aid Kitは麗しく、HAIMはカッコよくて面白くて、デヴィッド・バーンのステージも極めて先鋭的、X JAPANの狂騒も含めて眺めていたら夜になってしまった。そしてとにかく圧巻だったのはビヨンセのステージで、もうぐうの音も出ないくらい感動した。モニター越しでもものすごいものを観た、という印象。エンターテインメントの完成形だなあとしびれた。音楽って素晴らしいなあと改めて思った日曜日でした。

再開した録音作業の感覚がちょっと変わったような、そんな日曜日でした  
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2018年04月11日

中島愛 “Curiosity of Love”ツアーファイナル|ナイロン100℃『百年の秘密』

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先週末、レコーディングを夕方までやった後でお台場まで車を走らせて中島愛さんの復帰第一弾アルバム『CURIOSITY』発売記念ツアーのファイナル公演を観にいった。昨年の6月以来で目撃するライブでしたが素晴らしかったな。甲斐みのりさんとの共著『音楽が教えてくれたこと』で改めてまめぐちゃんの音楽に対する知識と愛情を再確認したあとでのステージだったのでなおさら、楽しそうに弾む姿が印象的でした。歌詞を書かせてもらった「最高の瞬間」、そして「金色〜君を好きになってよかった」はお客さんの掛け声、コール・アンド・レスポンス、フロアのペンライトの光でさらにスケールの大きなアンセムに昇華されていて、何度聴いても感動します。終演後まめぐちゃんに挨拶。会場で会ったラウンドテーブル北川くん(もう20年以上の付き合いになるなあ)、acane_madderさん、久しぶりにお会いした作詞家の岩里祐穂さんと記念写真。たまにライブにまめぐちゃんのファンの方が来てくれて「僕が(私が)言うのも変な話ですが…、いい歌詞をありがとうございました!」って言ってくれることがあってとても光栄。そんなこと他の作家仕事ではなかなかない。

昨日も夕方まで録音作業をしたあとで下北沢まで出かけて(南口がなくなった下北沢の違和感!)本多劇場でナイロン100℃『百年の秘密』を観劇。時間を行ったり来たりする大河ドラマは目まぐるしく展開して、休憩挟んでたっぷり3時間半もその長さを感じませんでした。だれか『ケラリーノ・サンドロヴィッチの頭の中』という映画を作って欲しい。作品を観るたびになんでこんなストーリーが思い浮かぶんだろうか、と思う。終演後KERAさんにお会いして『Punctual/Punk』を渡すことができて、「これ欲しかったんだよー」という笑顔がとても嬉しかった。いつも他愛ないメッセージのやりとりで僕の減らず口をバシッと叩き落としてくれる大好きな峯村リエさんもとても素敵でした。尾を引くような夢を見そうです。

先月末からずっと切れ目なくずっとレコーディング作業が続く日々なので、この2つの華麗な舞台を眺めて、大きく深呼吸をするような思いでした。  
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2018年03月18日

明日を強く希求する歌たち|エレファントカシマシを観た



エレファントカシマシのライブを初めて観た。それがデビュー30周年記念ツアーのファイナル、さいたまスーパーアリーナのソールドアウト公演だったことはとても幸運。エレカシがデビューしたのは多分僕がまだ中学生だった頃で、30年というのはそういう長い長い時間なのだ。冒頭2曲目でアリーナの天井から無数の風船が客席に降り注ぐのを見てとても感動。ストリングスとブラスを交えたロックンロールオーケストラ、ものすごいものを観たなあという気持ちのいい脱力感。歌も演奏もすごかった。どれだけ控えめに言っても“最高”のライブでした。

4人のメンバーだけで演奏した「悲しみの果て」、今年初めて眺めた桜吹雪、弾き語りの途中で宮本浩次がイヤモニを耳から引っこ抜いた瞬間、そして「四月の風」でのフィナーレ。エレカシの歌を聴いて心が震えるのは、過ぎた過去を振り返ることよりも、明日やその少し先の未来に向かって「さあ行こうぜ」と希求して手を伸ばす歌がたくさんあるからなのだなと思った。「おれも明日からまた頑張ろ」と勇気づけられたのです。3時間半近いステージが本当にあっという間だった。

素晴らしい夜でした。この機会をくれた友人に感謝。  
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2018年03月05日

毛玉/山田稔明(from CDR『CATS』)

HMVキチレコで売り切れてしまった2012年に作ったCDR作品『CATS』から「毛玉」を公開します。猫が毛玉を吐いたあとの気だるい感じを歌にしようと試みたものですが長い時間が経って聴き返してみるとThe Smithsマナーのとても洋楽的な、アルペジオがきれいな僕の好きなタイプの曲だなあと思いました。このCDR、久しぶりに聴き返してみると愛猫ポチの鳴き声がそこかしこに入っていて、忘れていたわけじゃないんだけど「ああ、ぽっちゃん。こんな声だったなあ」とブワッと涙が出てきてびっくりしました。みんなも猫と暮らしている人は鳴き声とか録音しておくといいですよ。写真も記憶を補完してくれるけど音声の威力のすごさを改めて感じました。




毛玉/山田稔明

なんて憂鬱な雨の日だ
まるで底なしの毛布の上
もう少しだけ待てば見えるだろう
君が投げた三日月のブーメラン
さあクロネコがきっと運んでくれるだろう

眠れ ねんねこ 眠れ ねんねこ
everyday is like sunday ah...

white light, blue beat and american pie
everything is dream
and you could throw yourself up now

白い光、青いビートとアメリカンパイ
すべては夢
今 君はすべてを吐き出せばいいさ


written, produced and all instruments by toshiaki yamada 2012  
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2018年02月19日

純粋なる喜劇|ファーザー・ジョン・ミスティ来日公演

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先週の木曜日、渋谷O-EASTでファーザー・ジョン・ミスティの来日公演を観た。2017年の『Pure Comedy』というアルバムを愛聴したのでとても楽しみにしていた。Youtubeなんかでライブの映像を観て期待が高まっていたわけだけど、実際のステージは本当に最初から最後まで圧巻。3枚のCDから満遍なく演奏されて、バンドも素晴らしくて「こういうのが観たかったの!」っていう感じで完璧だった。長身で四肢を翻して歌うジョシュ・ティルマンはジム・モリソンみたいなカリスマ性を持っていてぞくぞくした。その色気よ。トーマス・マンの小説『魔の山』を題材にした曲があって、僕はそれが大好きなのだけど、アンコールでそれが聴けてしみじみしたな。「ここに長くとどまればとどまるほど未来が失われていく/だから僕は魔の山で年老いていこう」。

ひとりで観にいったライブだったけど、終演後外に出てみると友人知人のミュージシャンたちがいっぱい観にきてて「やー、よかったねえ。完璧だったねえ」と語り合った。音楽っていいものだなあ…と折りに触れ感動して、そのたびに元気に生き返る自分は、結局音楽に救われているのだなあ、と思う。  
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2018年02月14日

song of the week|短い2月を駆け抜けて

2月も折り返し。普段英語の歌をCDに収録することは少ないのですが、この歌はとても気に入っていて
2016年にリリースしたアルバムに収めることができて嬉しかったです。今年も季節はもう今。
そして年頭に唱えた誓いをちょっと修正したり路線変更したりする年度末がやってきます。




my valentine

my valentine
would you hold me up when I fall down?
soak me in the chocolate sea
sprinkle me with a sugar breeze
love will find a way

oh, lay me down
on a cotton candy bed
I’m dreaming now, my valentine

roll me over the jelly beans
bury me into a melty cream
love will find a way

so hold my hand
what a sticky-sweet surprise!
I’m dreaming now, my valentine



僕の愛しい人よ
僕が崩れ落ちるときは受け止めてくれるかい?
チョコレートの海に沈んで 甘い潮風に吹かれて
愛がそこへ導くのなら

綿菓子のベッドに横たわって
僕は夢を見ているところ マイ・ヴァレンタイン

ジェリービーンズと溶けそうなクリームで僕を埋葬して
愛がそこへ導くのなら

僕の手をとって なんて素敵なサプライズ
僕は夢を見ているところ マイ・ヴァレンタイン





『pale/みずいろの時代』を通販STOREで購入


  
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2018年01月01日

2017年 個人的音楽10選

1月1日は振り返る日。2017年も良いレコードがたくさんありました。夏頃から毎日ずっと何回も、アンセムのようにHAIMの「I Want You Back」が鳴り続けていたのだけど、秋にThe Nationalの新作が出てからは取り憑かれたようにそればっかりになって、旧作まで全部集めてしまったほどです。なので、今年のベストはThe National『Sleep Well Beast』、2位がHAIM『Something to Tell You』となりました。それ以下の順位にはあまり差がありません。毎年そうだけど、トレンドと全然関係のない、アメリカの、好きなものばかりを集めた10選になりました。

Conor Oberstは2016年個人的ベスト作品だった『Ruminations』のバンド編成盤、大好きな音、抗えない音。Beach Fossilsは若いバンドで、この夏に涼風を吹かせてくれた。Weezerは前作に引き続く快作で僕を唸らせ、過ぎた夏を蘇らせたのです。フランキーコスモス(グレタ)のコーラスも麗しかったDent Mayはバリ島に行ったときのBGMとして素晴らしく作用し、Courtney BarnettとKurt Vileの手合わせは予想以上に充実したものでした。

フジロックで観て、Real Estateの自分のなかでの存在感を再確信。アルペジオの魔法を想いました。もしFarther John Mistyのステージを観ることができていたら、彼のこのレコードはもっと上位にランキングされていたかもしれない。そのフジロック2017での個人的ベストアクトだったThe Lemon Twigs『Do Hlooywood』、これは前年のリリースなので次点としました。新作シングルもよかったな。そして不意に出会ったEthan Gruskaの、震えるような音世界は長い夜によく似合っていて、今夜もそっと静かに響くのです。

邦楽では友人であり尊敬する高橋徹也、言葉の紡ぎ方が好みのシャムキャッツ、そして2017年に聴いた歌のなかで一番感動した「天国かもしれない」のむぎ(猫)の3枚を。2月ちよだ猫まつりでのむぎちゃんとの対バンが楽しみです。2018年もいい音楽を求めて宝探しは続きます。



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<2017年 良かった音楽10選>

1.The National 『Sleep Well Beast』
2.HAIM『Something to Tell You』
3.Conor Oberst『Salutations』
4.Beach Fossils『Somersault』
5.Weezer『Pacific Daydream』
6.Dent May『Across the Multiverse』
7.Courtney Barnett and Kurt Vile『Lotta Sea Lice』
8.Real Estate『In Mind』
9.Farther John Misty『Pure Comedy』
10.Ethan Gruska『Slowmotionary』
次点:The Lemon Twigs『Do Hollywood』


<邦楽3選>

高橋徹也『Style』
シャムキャッツ『Friends Again』
むぎ(猫)『天国かもしれない』




2017年は全然映画を観なかった年でした。『パターソン』と『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』くらい?忙しさを言い訳にしないで、2018年はもっとインプットを増やしたいなあと思っているところです。  
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2017年11月16日

5年目の『Christmas Songs -standards and transfers』



2012年に福田利之さんのイラストをまとって発売した『Chirstmas Songs - standards and transfers』が今年で5周年を迎えます。僕の活動の幅を広げ、いろんな意味でも僕を救ってくれた、自分にとってとても大切な作品です。愛猫ポチの声がたくさんつまった思い出のレコード(記録)です。今年もどうぞよろしくお願いします。オフィシャルサイト通販STOREでご購入できますし、僕の測り知らないところで毎年たくさんのご家庭に飛び立っていく不思議なCDでもあります。寒い季節にあたたかい音楽を。


『Christmas Songs -standards and transfers/山田稔明』
(全12曲入り/2,100円税込/2012年発売/GTHC-0003)


1.sombody's coming(introduction)
2.joy to the world(もろびとこぞりて)
3.jingle bells(ジングルベル)
4.oh my darling, clementine(雪山賛歌)
5.wish you a merry christmas
6.greensleeves
7.when the saints go marching in(聖者の行進)
8.the first noel(牧人ひつじを)
9.symphony no.9(ode to joy)
10.amazing grace
11.silent night(きよしこの夜)
12.o christmas tree(もみの木)

arranged, performed and produced by Toshiaki Yamada

◎全曲のアレンジ、演奏、歌、多重コーラス、録音とミックス、さらには
マスタリングまでの全工程すべて山田稔明が担当、まさにハンドメイドなあたたかいレコードです。
◎誰もが知っているクリスマススタンダードをフォーキーに織りなす季節感たっぷりの1枚です
◎アートワークは『新しい青の時代』と同じく人気イラストレーター福田利之による描きおろし。
◎紙ジャケ仕様、ブックレット封入、帯がつきます。


『Christmas Songs』を通販STOREで購入  
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2017年10月26日

ジャクソン・ブラウンと横書きのままの歌と言葉

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先日24日の広島公演でジャクソン・ブラウンの2年半ぶりの来日公演がすべて終了した。僕は東京の追加公演のチケットが取れて、幸運にも10列目という至近距離でジャクソンの歌を聴くことができた(2年半前は1階の最後列だった)。ジャクソンは観客のリクエストに応えるので毎晩セットリストが変わる。セットリストがSNSで流れてくるたびに「わああ」とか「えええ」とかため息をついたが、僕が行った日も一期一会の夜だったはずだ。聴きたい歌のいくつかが聴けて、叶わなかった曲はそれより多かったけれど、ジャクソン自身がドリームバンドと呼ぶプレイヤー陣の演奏も含めてとにかく至福の3時間。しびれた。

僕がジャクソン・ブラウンを初めて聴いたのはアクシデントのようなものだった。親類から段ボール数箱分もらった輸入レコードのなかに『孤独なランナー』が紛れていた。僕はその名前からファンキーでごきげんな音楽を想像してプレイヤーに乗せる(ジェイムス・ブラウンと勘違いしていたのだ)。聞こえてきたのはクセのない、憂いと陰りを湛えた真っ直ぐな歌、ギターとピアノとバンドサウンドだった。このレコードから受けた影響は計り知れない。「遅れてきた青春」も「星に輪ゴムを」もこのレコードがなければ生まれなかった。ライブツアーをしながら作られた変則的なアルバムで、僕はそのオリジナル・スタジオ・バージョンを探したのだけど、はなからオリジナル・バージョンが存在しないと知ったのは数年後のことだ。

さかのぼって聴いたレコードのなかに『Late for the Sky』があり、その表題曲は20世紀のアメリカン・ロックの代表曲。僕が目撃したコンサートでも演奏された。69歳になってもこの歌を歌うとき時間が巻き戻ってジャクソンは見目麗しい青年に変身する。この「Late for the Sky」というフレーズの真意を僕は中学生の頃からずっと理解できないでいる。今でもそうだ。正確に言うと、日本語にパラフレーズできない。「空に遅れる」とはどういうことか、それが朝なのか昼なのか夜なのか。横書きの歌を縦書きに変換するのはなかなか難しいが、この日の素晴らしい歌と演奏を前にしたらどうでもよくなった。2017年の長雨が続いた秋の夜に僕はこの「Late for the Sky」を言葉そのままに全身で受け止められたような気がする。

ライブが終わって興奮さめやらぬまま、ジャクソンが使っていたのと同じギターを勢いにまかせて買ってしまうというサブストーリーも付随して、忘れられないジャクソン・ブラウン来日公演となりました。「Load Out/Stay」で締めくくられるステージを観るまでまた何度でもコンサートへ出かけていきたいと思います。  
Posted by monolog at 14:56Comments(2)