ずいぶん時間が経ってしまったけれど、Toad The Wet Sprocketのボーカリスト Glen Phillipsの来日公演に行ったことをブログに書いてなかった。前回8年前の来日のとき僕はどの公演も都合がつかなかったから10年ぶり(そのときも松山まで観にいった)のグレン。ぎゅうぎゅうの下北沢ラカーニャで聴く彼の歌とギターはやっぱり絶品だった。バンドの曲もソロの曲も新旧織り交ぜて、ちゃんと聴きたい歌も聴けたし、カバーで歌われたセサミストリート関連のカバーも心温まるものでした(グレンの歌う「Rainbow Connection」もいい)。
終演後、サインの列に並び挨拶するとグレンは昔CDを渡したGOMES THE HITMANのことも僕のことも憶えていてくれて嬉しかった。中学生のときから聴いてるバンドだけど、グレンは18歳でデビューしているから僕と3つしか歳が離れていない。結局鎌倉には観にいけず残念だったけれど、名古屋のライブで僕がプレゼントしたGTHのTシャツを着て演奏してくれたそうで、そういうちょっとしたことで心が元気になったりする。ありがとうございました。
毎度名物の客席からの怒号のようなリクエストが今回は控えめだった気がしたのはコロナ禍以降のせいか。思わぬレアな曲もいくつか聴けたけれど、しっかりジャクソンが考えたセットリストで歌が聴けたのもよかった。2月にキーボード奏者のジェフ・ヤング、3月にデヴィッド・リンドレーと音楽を共に作ってきた盟友の旅立ちが続いたので追悼ムードも色濃かった。「Call It A Loan」は意外ににも唯一のジャクソンとリンドレーの共作曲だそうで、とても丁寧にギターのフレーズが演奏されたことが印象的だった。ジャクソンは今74歳、眉毛もひげも白髪になったけれど、すらりとした容姿と声は力強い。なんの不満もないコンサートだった。
仲間、友だち、そして推しの新作っていつもとても楽しみ。むぎ(猫) のニューアルバム『SONG OF LIFE』の発売が猫の日に晴れて情報解禁となった。珍しく英語のタイトルがついているけれど、本人曰く「英語でしか言えなかった」とのこと。詳しくは今週末のPRIMECATS RADIOにゲストで登場してお話してくれます。ぜひお聴きください。
猫町フェス2022の東京でのステージで演奏した「ニャンとなるSONG」がとても好評で、「歌詞が読みたい」「どこかで聴けるところがないか」と少なくないメッセージやリクエストがあってとても嬉しいです。「ニャンとなるSONG」は今年の2月に書いた歌です。コロナ禍のため開催スケジュールが変更になり「ちよだ猫まつり」に出演できなくなった僕は代替案としてちよだニャンとなる会が手掛けた保護猫カフェで無観客ライブをしてそれを配信する、というのをやったのですが、そのときにスタッフの皆さんへのサプライズとして新曲を書き下ろして、それがこの歌だったのです。一日かけて突貫工事したデモ音源もちよだニャンとなる会にプレゼントして、それは神保町にある「オープンシェルター by ちよだニャンとなる会」(9月に名称が変更になりました)でBGMとして流れたりしています。このシェルターには町田尚子さんの大きな絵が飾られていて、無観客ライブはその大きな絵の前で歌いました。2月当時というのは町田さんが愛猫白木さんを亡くしたタイミングだったので、町田さんと白木さんへのメッセージも包括した歌になっていますし、何より僕自身が猫と暮らす日々のなかで出会いと別れを経験しているので、嬉しいことも悲しいことも全部詰め込んだ優しい歌にしたいなと思って書きました。興味のある方はぜひオープンシェルター by ちよだニャンとなる会へ足をお運びください。
猫町フェスで演奏する曲目を考えていたときに、この歌をみんなで演奏することほど相応しいことはないなと思いました。キーを元の歌から全音上げにして(僕より高いところを歌えるむぎちゃんがいたから歌ってもらおうと思いました)、ギターのアルペジオイントロからみおさんのバイオリンが導いてイトケンズがリズムイン、僕もむぎちゃんもイノトモちゃんもみんな口を大きく開けて歌い、かっこいいギターソロを近藤さんが弾いて、お客さんが泣いたり笑ったりしている。2月にはなんとなく「つながるころがる」という仮タイトルで呼んでいたこの歌が、猫町フェスバンドで演奏したら「ニャンとなるSONG」というちょっと間抜けなとぼけた可愛いタイトルに確定、完成した!と思いました。遠くない将来にみんなで録音したいですね。以下に歌詞を掲載します。初めてこの曲を歌ったちよだニャンとなるカフェ(現在のオープンシェルター by ちよだニャンとなる会)で行ったライブは今でもYoutubeでご覧いただけますのでぜひお楽しみください。
毎週恒例の「水曜日のインスタライブ」、山田稔明全詩集を頭から全部歌っていく企画は2002年GOMES THE HITMAN『mono』の佳境、そのハイライトともいえる3曲「笑う人」「忘れな草」「百年の孤独」を歌った。夜の11時に歌うにはなかなかカロリーの高い選曲だけど、時系列でやっていくことになってるから避けられないのだ。『mono』というアルバムは思い詰めた感じがする、とずっと思っていたけれど2005年の『ripple』も相当思い詰めてるし、結局『cobblestone』以降ずっと僕は思い詰めているのかもしれない。思い詰めてるけど楽しいこともあるし、嬉しいこともあるし、幸せを感じたり胸が痛くなったりする。それが人生なのだ。
いつも仕事部屋に組んである配信のシステムを先週末全部富山に運んだのを、また改めて組み直して定例「水曜日のインスタライブ」。急に部屋が広くてキレイになったな、と思っていたのも束の間、また元通りの混雑したスペースに戻りました。山田稔明全詩集を頭から順番に歌っていくインスタライブ企画は『cobblestone』のハイライト。「太陽オーケストラ」「シネマ」「keep on rockin'」とスケール大きめの重要曲3つを歌う夜。掃除をしていたら出てきた当時の写真、CDブックレットに使用された映画館に僕がひとりポツンと座っている写真は三軒茶屋シネマで観客入れ替え時にゲリラ撮影したものだった。2014年に閉館し60年の歴史に幕をおろした、今はもうない場所。
この日街へ出たのはラナ・デル・レイの新しいアルバムを発売日に購入するためだった。一昨年サンフランシスコに行ったときにレコード屋に並んでいた前作『Norman Fucking Rockewell!』で完全に虜になってしまった僕にとって1年半ぶりの待望の新作。間違いなく今年の個人的最重要作である。映画を見終わったあとついにアナログ盤を手に入れて早足で家まで帰り、ターンテーブルにレコードを乗せて針を落とす。歌詞を目で追うとなんとオープニングトラックに「Like Sun Ra/I feel small/But I had it under control every time」というフレーズがあり「なんだこれは」とそのシンクロニシティにびっくりする。Lana Del Rey『Chemtrails Over The Country Club』、ものすごく重厚で美しいレコード。ずっと聴いている。
水曜日恒例、全詩集『HOW SHOULD I SAY TO BE YOUR FAVORITE POET?』を頭から順にすべて歌っていく企画の11回目。ちょっとずつやり方がアップデートされてて、今回のアーカイブは音のミックスをこれまでとは違うDAW(音楽制作ソフト)でたどたどしくやったので、個人的には新鮮なところがありました。いい年になって新しいことを憶えるのはなかなか大変で、それでも理解したり攻略したりすると超うれしい。
今週の「水曜日のインスタライブ」はついに『weekend』に突入。冒頭3曲、「光と水の関係」「長期休暇の夜」「何もない人」と歌ってみて、嗚呼なんとGOMES THE HITMAN的な、と思った。「長期休暇の夜」はあとで気づいたけれど全音下げで演奏してしまってて、次バンドでオリジナルキーでもっと息を切らして歌いたいなと思いました。インスタグラムのIGTVでアーカイブをご覧いただけます。
木曜日にやった「水曜日のインスタライブ」。全詩集から全曲歌う企画の8週目。『neon, strobe and flashlight』を歌い終えて、さらに『rain song ep』の3曲も駆け抜けた。自分のキャリアにとって大きな意味をを持つ4曲だったような気がして、なかなか充実した走馬灯のような40分弱だった。いよいよ次回から『weekend』に突入である。
『neon, strobe and flashlight』の締めくくりにブックレットに掲載されている詩を朗読しようとしたら文字が小さすぎて(実際は暗かったからだな)うまくよめなかったのが残念だったので以下に書き記したいと思います。水曜日のインスタライブは山田稔明のインスタライブ IGTVでアーカイブをご覧いただけます。
定例「水曜日のインスタライブ」のアーカイブを公開した。物販の宣伝や冗長な部分をカットした編集版になっていて、インスタグラムのIGTVからご覧いただけます。メジャーデビューミニアルバム『neon, strobe and flashlight』から「ストロボ」、基山でのコンサートに続いてまた「夕暮れ田舎町」、そして「アップダイク追記」と3曲を演奏。アルバムタイトルについて、そのネタ元がサイモン&ガーファンクルの「Sounds of Silence」だという話を冒頭にしているけれど、自分にとっての「FAVORITE POET」は間違いなくポール・サイモンである。今も昔も自分にとってソングライティングとは詩作のこと。初期の楽曲を歌いなおすと改めて自分が目指した目標を再確認することになる。まだまだ辿り着けないけれども。
今年に入って山田稔明全詩集「HOW SHOULD I SAY TO BE YOUR FAVORITE POET?」を頭からずっと演奏するという企画になった毎週水曜日23時からの「水曜日のインスタライブ」。今週は京王百貨店催事の設営のあと、バタバタしながら仕事部屋に戻ったのでなんだか落ち着かなかったのですが、もともとインディー時代の作品は落ち着きのないCDたちなのでちょうどよかったかな。「溶けて死ぬのさ」「coffee」「恋はワイルドシング」「universal student」と4曲演奏して『down the river to the sea』全曲をさらいました。「universal student」という意味深なタイトルのネタばらしは初めてだったんじゃないかな。
昨日のこと、お昼過ぎに音楽ライターの友人からメッセージが届いた。「山田くん、このレコード探してるって言ってなかったっけ?」と送られてきた写真はイギリスはスコットランドのトラッシュ・キャン・シナトラズが1993年に出した『I've Seen Everything』のアナログ盤だった。こ、これは、もう僕が10年以上ずっと探してて、ウォントリストのトップに常に鎮座するレコードなのであった。奇声も自然ともれていたであろう、僕はすぐさま「どこ!?いつ!??」と興奮して返事。30分前に下北沢の中古盤屋にあった、となると居ても立ってもいられない。
夕方からギャラリー自由が丘でのライブだったのだけど、身支度を急いでバタバタと下北沢へ。お願いします神様、もう今、欲しいレコードは『I've Seen Everything』だけなのです…とかなんとか心の中でぶつぶつ言いながら。そして果たして、僕はついにトラッシュ・キャン・シナトラズ『I've Seen Everything』を手中に収めたのだった。1万円札を何枚も使う覚悟のあった1枚なのに、拍子抜けするくらいの値段で。レコードの神様はいると思った。僕のアーバンブルーズへの貢献。LPジャケットをちらちら見ながら僕はそのまま自由が丘に向かったのでした。
このレコードが出た1993年は僕がGOMES THE HITMANを結成した年、26年前のこと。このレコードを聴いて僕はGOMES THE HITMANをこんなふうな、キーボードを擁するギターポップバンドにしたいと思ったのでした。もちろんCDでは20余年ずっと聴き続けている名盤だけど、ターンテーブルにのせて針を落として聴くのは全然違う。自由が丘から帰ってきてすぐ聴いた『I've Seen Everything』は美しく空気を震わせていました。間違いなく平成最後の大収穫、連絡をくれた友人に心から感謝を。音楽って本当に素晴らしい。好きになった歌は僕を裏切らないし、心を元気にしてくれる。
1週間経ったけどまだふわふわしている。フィービー・ブリッジャーズの来日公演が素晴らしかった。フィービー・ブリッジャーズを知ったのは昨年初めのこと。Twitterでスピッツのディレクター竹内さんと交わしたイーサン・グルスカの話題がきっかけでデビュー作『Stranger in the Alps』を手にしたのだけど(ライブ1日目、僕のすぐ隣で観ていたのはその竹内さんではなかったかな)誇張でもなんでもなく、その日からほぼ毎日このレコードを聴いた。歌詞を読んで思いこまされたり、一緒に小さな声で歌ったり、たくさんの音楽に触れる日々にもこれほど熱心に対峙する作品というのは稀だ。2018年初頭からの僕の心にその歌が完璧にマッチしたわけである。忙しさにかまけて「2018年に聴いた音楽ベスト」というのを2月末になっても記事にできず下書きのまま手付かずになっているのだけど、当然この2017年の終わりに出たフィービー・ブリッジャーズの作品は、だんとつで僕の2018年ベストレコードとなりました。
2日目は相対性理論の永井くんと連れ立って出かけて、初日よりは少し後ろの方で、もうちょっと冷静にその世界観を堪能した。アルバムの曲はもちろん、ジュリアン・ベイカーとルーシー・ダッカスとのBoygenius、コナー・オバーストとのBetter Oblivion Community Centerの楽曲、ギリアン・ウェルチのカバー、そして初めて聴く新曲など。才気あふれる、というのはこういうことか。とめどなく歌や言葉が溢れてくる季節なのだろう。ステージの上では震えるほど美しく見えたフィービーは、しかし、終演後のサイン会で目の当たりにすると小柄で可憐な24歳の女の子で、リクエストした猫のイラストを悩みながら時間をかけて描く仕草がとてもかわいかった。最高の2日間だった。時間が経ってもまだ消えない余韻のなかにいる。
一旦帰宅して少し休んで、再び東京ドームへ。日もとっぷり暮れて光溢れる街。会場全体を見渡せる席で、今回も連動式のLEDリストバンドを腕にはめて開演を待つ。で、内容はもう完璧なエンターテイメントで、一瞬たりとも退屈することなく、ダイナミックなダンスも、ステージセットも映像も、新旧含めたセットリストやアレンジも圧巻なものでした。少しでも行くのを躊躇したことを謝りたいくらい。EDM最先端なトラックでも、ギターの弾き語りでも、すべてがテイラー・スウィフトらしくてさすがだなと思いました。今年観たコンサートで一番かな。「テイラー・スウィフト好きだなんて意外だ」とよく言われるけれど、テイラー・スウィフトを好きじゃない人がいることのほうが僕には不思議なのですよ。「Taylor Has Nine Cats' Lives ―僕らが彼女に夢中な理由」という書き下ろしエッセイを寄稿した本はこれ。その日以来、去年出た『Reputation』というアルバムを遅ればせながらずっと聴いています。とても良いです。
今年の夏に京都から帰ってくる車のなかで大きな音で一緒に聞いた「友よ、また会おう」という新曲を最後にやったのがよかった。ライブを観ていた友だちが「あれは山田のことを歌ってるんじゃない?」と言ってたけど、それは違うと思った。あれはすべての人に向けられた、照れたような、困ったような、しかしとても優しく友を鼓舞する笑顔のような歌である。彼のライブの翌日にソニーへ出向いて来年のGOMES THE HITMANアニバーサリーのための打ち合わせが始まった。自分のバンドが結成から25年とか来年でデビュー20年とかの節目を迎えようとしているこの頃、高橋徹也という人の活動はとても興味深い。
まだ歌を聴き足りなかった僕は翌日、松陰神社前のタビラコで行われた細海魚さんと八野さん二人でのライブも観にいったのです。小さな空間にきゅっとみんなで集まってミツバチの羽音に耳を澄ます、そんな感じの素敵な時間。前日と曲かぶりはほとんどなく、季節柄聴きたかった「OCTOBER SONG」、「サトウカエデの下で」も聴けたし、魚さんのウーリッツアーの音がとても艶っぽくて、リラックスしてるのに緊張感がある雰囲気がとてもよかった。八野さんは「これ」とシャツをはだけてモリッシーのTシャツを見せてくれて、そこには8月に京都で一緒に歌ったTHE SMITHS「ASK」の歌い出し、「SHYNESS IS NICE(恥じらいって素敵だね)」と書いてあった。楽しくて幸せな一日でした。
これはヨ・ラ・テンゴの2000年作『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』収録、トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』を下敷きに作られた「The Crying of Lot G」のことなのだけど、こういう、繰り返される静かなパンチラインがディスコグラフィーのいくつものカタログに渡って小さな儚い花を咲かせているような、そういう感じが彼ら独特の詩情であり魅力だと感じる。20年近く好きで聴いているこのバンドのライブを先週初めて生で体験した。なんで今まで行かなかったんだろうか。スケジュールとかタイミングの問題とか、わりと頻繁に来日してくれるからまた次の機会に、となっていたのか。とにかく今回の来日公演は新譜がとても良かったこともあってわりと早くチケットを押さえていたのだけど(ソールドアウト公演になっていた)もうすべてのシーンが素晴らしくて感動したし、楽しくて元気が出た。時間を遡りたいと思ったほど。こんなに心地いい静寂と爆音とノイズがあるだろうか。こういう瞬間や心の動きに気づかされるから音楽の持つ力は計り知れない。
今年の春に突如復活が告知されたストリートスライダーズのハリーと土屋公平(蘭丸)による“伝説”のユニット JOY POPS。ふたりが一緒に演奏するのはなんと18年ぶりとなる。これまでどれだけ頑張っても全然チケットが取れなかったのだけど、ようやっと手に入れた昨晩のビルボードライブ東京でのライブ、何ヶ月も前から楽しみにしていたのです。ハックルベリーフィンのさくちゃんとたけ兄と3人で並んで観ました。3人とも中学生みたいな顔してたんじゃないかな。ときおりアコースティックギターを手にするも、基本的にはふたりのエレキと歌だけのシンプルな演奏。しかし1曲目の「Bun Bun」から最後のストーンズ「Rip This Joint」風にアレンジされた「Boys Jump the Midnight」までずっと楽しくて一緒に歌った。歌詞も全部おぼえてた。声もギターもよく鳴って、想像以上によかったし、ノスタルジーのようなものをあんまり感じなかったのはスライダーズの楽曲が古くならないロックンロールだからだろうか。
終演後になんとサイン会がある!というのでたけ兄、さくちゃんと一緒にドキドキしながら時を待つ。ハリーは去年吉祥寺HMV record shopでインストアイベントがあったけど、サイン会にはなんとなく並べなかった。この日迷わず列に並べたのはステージ上の雰囲気がとても良かったからかもしれません。公平さんには3年前の秋にベースえびちゃんを介してお会いできて話をさせてもらっていたのだけど、そのときのことをちゃんと憶えていてくれて「よく来たね」ととても優しかった(そのときのブログ「好きなものを好きでいつづけること」)。ハリーも穏やかな笑顔、ハリーと握手できるなんて思いもしなかった。僕が持参していた1988年の5周年記念本を見てニヤリと笑った。興奮冷めやらぬまま外へ出ると土砂降りの雨だったけれど僕はふんふんと鼻歌を歌いながら、気分良く帰路を辿ったのでした。
しかし、そのラインナップに「目に見えないもの」や「別れの歌」といった淡々と情景と心情を歌う静かな歌が加わる。「百年の孤独」はMac & Wendysという課外活動バンド(メンバーは僕、PLECTRUM高田タイスケ、セロファンの高内シロウと溝渕ケンイチロウ、そしてライターの山田ゴメスさん)でのライブのために僕が書いた曲だった。ポール・オースターの小説とソフィ・カルという芸術家の著作『本当の話』をモチーフにして書いた「言葉の海に声を沈めて」はこれまでのGOMES THE HITMAN楽曲とは異なる雰囲気の歌になった。内なる声と発せられる声、と考えたときにSmall Circle of Friendsの東 里起さんをゲストに迎えたいと思って、渋谷クアトロでのライブを観たあと出待ちをして依頼したことを忘れない。
昨日のこと、GOMES THE HITMANのリハーサルをお昼から夕方まで。今回13年ぶりの新録盤『SONG LIMBO』の先行発売ライブなので、そのなかからの楽曲が中心になるのだけど、せっかくだから“LIMBO=天国と地獄の間の辺土”をまだまださまよい続ける曲にも光と風を当てようということになり、結果としてレアすぎる内容になっている。「饒舌スタッカート」はもちろん、「手と手、影と影」も「夜明けまで」も「愛すべき日々」もやらない。お客さんのなかには1曲も知らない、という人もいるのではないだろうか。僕らもわくわくしている(そしてやりなれてないからヒーヒー言ってる)。
隣のスタジオでは村田和人バンドが7月2日から始まるレコ発ライブツアーのための練習をしていたので挨拶、そのまま僕はそちらの練習に参加した。ちょうど完成したばかりのCDをいただいた。村田さんが最期まで取りかかっていたアルバム『ド・ピーカン』は村田バンドと仲間たちの尽力でついにその全貌がもうすぐ明らかになる。7月2日発売。村田さんらしいビッグスマイルが嬉しい。このレコードにはこういうジャケットが似合う。村田さんの不在を感じると同時に、確実に“ここにいる”という感覚が共存していて、聴き入ってしまうのです。GOMES THE HITMANは2曲担当、村田さんにも褒めてもらえるような仕上がりになったと思います。吉祥寺スターパインズカフェでのライブはパンパンの満員ソールドアウトだそう。神戸と京都はまだチケットがあるかもしれません。僕はすべての公演に参加、スターパインズカフェではGOMES THE HITMANでの演奏になります。CDもライブもぜひに。
KAZUHITO MURATA & HIS FRIENDS
『ド・ピーカン』発売記念ライブ ツアー
2018年7月2日(月)@ 神戸 VARIT
2018年7月3日(火)京都 都雅都雅
2018年7月4日(水)東京 スターパインズカフェ【SOLD OUT!】
昨日のこと、カリフォルニアの砂漠で開催される恒例のコーチェラ・フェスティバルの生中継を観始めたらついつい見入ってしまって、やらないといけない仕事がたくさんあったのに全然手につかなくなって、First Aid Kitは麗しく、HAIMはカッコよくて面白くて、デヴィッド・バーンのステージも極めて先鋭的、X JAPANの狂騒も含めて眺めていたら夜になってしまった。そしてとにかく圧巻だったのはビヨンセのステージで、もうぐうの音も出ないくらい感動した。モニター越しでもものすごいものを観た、という印象。エンターテインメントの完成形だなあとしびれた。音楽って素晴らしいなあと改めて思った日曜日でした。
1月1日は振り返る日。2017年も良いレコードがたくさんありました。夏頃から毎日ずっと何回も、アンセムのようにHAIMの「I Want You Back」が鳴り続けていたのだけど、秋にThe Nationalの新作が出てからは取り憑かれたようにそればっかりになって、旧作まで全部集めてしまったほどです。なので、今年のベストはThe National『Sleep Well Beast』、2位がHAIM『Something to Tell You』となりました。それ以下の順位にはあまり差がありません。毎年そうだけど、トレンドと全然関係のない、アメリカの、好きなものばかりを集めた10選になりました。
2012年に福田利之さんのイラストをまとって発売した『Chirstmas Songs - standards and transfers』が今年で5周年を迎えます。僕の活動の幅を広げ、いろんな意味でも僕を救ってくれた、自分にとってとても大切な作品です。愛猫ポチの声がたくさんつまった思い出のレコード(記録)です。今年もどうぞよろしくお願いします。オフィシャルサイト通販STOREでご購入できますし、僕の測り知らないところで毎年たくさんのご家庭に飛び立っていく不思議なCDでもあります。寒い季節にあたたかい音楽を。
『Christmas Songs -standards and transfers/山田稔明』
(全12曲入り/2,100円税込/2012年発売/GTHC-0003)
1.sombody's coming(introduction)
2.joy to the world(もろびとこぞりて)
3.jingle bells(ジングルベル)
4.oh my darling, clementine(雪山賛歌)
5.wish you a merry christmas
6.greensleeves
7.when the saints go marching in(聖者の行進)
8.the first noel(牧人ひつじを)
9.symphony no.9(ode to joy)
10.amazing grace
11.silent night(きよしこの夜)
12.o christmas tree(もみの木)
arranged, performed and produced by Toshiaki Yamada
さかのぼって聴いたレコードのなかに『Late for the Sky』があり、その表題曲は20世紀のアメリカン・ロックの代表曲。僕が目撃したコンサートでも演奏された。69歳になってもこの歌を歌うとき時間が巻き戻ってジャクソンは見目麗しい青年に変身する。この「Late for the Sky」というフレーズの真意を僕は中学生の頃からずっと理解できないでいる。今でもそうだ。正確に言うと、日本語にパラフレーズできない。「空に遅れる」とはどういうことか、それが朝なのか昼なのか夜なのか。横書きの歌を縦書きに変換するのはなかなか難しいが、この日の素晴らしい歌と演奏を前にしたらどうでもよくなった。2017年の長雨が続いた秋の夜に僕はこの「Late for the Sky」を言葉そのままに全身で受け止められたような気がする。